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川が好き。山も好き。
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8月に入りましたが6月号を読みますよ。敬称略です。

  赤べこの背に積んでいる米二俵きっと重いとこのごろ思う  山下洋

 丑年だからかコロナ退散祈願か赤べこが今年は売れているとのこと、特に願いをかけたのが俵べこ。確かに米俵も人の期待も重そうです。そして初めて見た時というわけでなく「このごろ」なのがおもしろいのです。

  なんでこの手袋に指が入らぬかかじかんだ眼にも涙が湧きぬ  土肥朋子

 切実さが伝わってきて惹かれます。手袋そのもののもどかしさだけでなく、これまで抱えててきたものが手袋をきっかけとして噴き出したような。

  この世にはいない夫を誰よりも頼りにしつつまた春迎う  畑久美子

 いなくなってなお心の支えでいてくれるということ。神様や仏様のように、それはもはや信仰のようなものかもしれません。
  
  花の名を犬に教えてなんとしょうそれでもなずなたんぽぽの花  林田幸子

 犬に教えるというかたちをとりながら、語ることで自らが癒されることもあるでしょう。受け止めてくれる犬や花の優しい春です。

  弁当を今日はやすむと決めたときふとんふかふか私をつつむ  山名聡美

 あともう少し寝ちゃおう、と吹っ切れてふとんの存在感が増してきました。ひらがな表記と「ふ」の語感がいいです。

  馬となって五番目の孫と遊ぶには息が足りない三歩も歩めず  新城研雄

 四番目の孫までは馬になって背中に乗せて遊んであげられたのでしょうか。きっと複数の子がいての五番目の孫という家族ドラマも想像させます。下の句が河野裕子さんみたいな石川啄木みたいな。

  皮むきのムッキーちゃん添え八朔を友は呉れたり袋に入れて  竹内多美子
 
 「ムッキーちゃん」が歌に詠まれているのを初めて見ました。歌会だと「ムッキーちゃん」か「袋」かに焦点を絞った方がとか言われそうですが、要素の多さにお友達のキャラがにじみでているようにも思うのです。

  おおかたは一人暮らしのアパートの一つ一つの部屋が灯って  杉田菜穂

 人と会わなくなり、どこでも距離をとるようになり、といったコロナ禍の一連。アパートの灯に、同じように過ごしている人がいるのだとなぐさめられるのかもしれません。

  二十年使いしストーブ手放しぬ亡夫の作りし凹みも共に  成瀬真澄

 凹みを手放すという把握がおもしろいです。凹みを作ったその時はもめたりしたかもしれないですが、時を経て旦那様と過ごした日々の証にもなったのでしょう。

  朝食に弁当二つ作ること支えとなりぬ我が退職後  原田典子

 弁当が朝食、という読みであってるかな。必要とされること、役割があること、誰かのためにがんばることで逆に自分が支えられるということ考えされます。

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おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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