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川が好き。山も好き。
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このところずっと通勤ラッシュを外した時間帯での勤務がほとんどなのですが、先日はたまの早番で久しぶりに満員電車に乗りました。
 いつもは、立っていても本を読めるぐらいのゆとりはあるのに、さすがにぎゅうぎゅう詰めの中では両手を下に降ろさないと乗れません。A4サイズ対応の肩掛けのバッグを降ろして、持ち手を両手で持っていると、手の甲が前の人のお尻あたりに触れてしまうんじゃないかひやひやします。
「痴漢に間違われないように電車の中ではスマホを見るようにしている」と、後ろの方から男性同士の会話が聴こえました。満員電車の中でも必死に腕を上げてスマホを見ている人を、通勤のちょっとした時間くらい我慢できないなんてどんだけスマホ依存なのよと、今までは冷めた目で見ていましたが、痴漢冤罪対策でもあったのか。目からうろこが落ちたところで、斜め前でスマホを見ている男性のつき出した肘が、わたしの胸に当っているのでした。
 胸、といっても薄着の夏ならともかくまだ上着を着ていて、たまたま胸の位置なだけで別に肉の感触が伝わってはいないでしょうし、スマホを見るふりして肘で痴漢してやろうなどというつもりでもないでしょう。ま、若くもない豊満でもないわたしの体。たいした価値があるわけでもない。どうでもいい。
 どうでもいい、なんてことはないのか。

 十数年前の20代の頃のこと、葬儀で帰省した山形から仙台へ戻る電車で、わたしはボックス席の車両の端っこの、半ボックス席の窓側に座っていました。隣に、中年男性が座ってきて、コートを脱ぎだしました。それから異常なことが起きました。変だなと思って、気のせいではないとわかって、でも「やめてください!」などと叫んだら何かもっとひどいことをされるんじゃないかって怖くて声も出なくて、せめてもの抵抗としてわたしは持っていたバッグを相手にぎゅうぎゅう押しつけたのですが全然効かなくて、わたしは窓側にいて逃げられず、一時間ほどの乗車時間の間、電車の壁に体を張り付けてただただ耐えることしかできませんでした。
 駅について電車を降りてわーっと自宅に帰って、電話で母に電車での中のことを泣きつきました。母は、あっそ、とか、ふーん、といった感じで、無関心でした。え、それだけ?と、感じました。自分ではひどいことをされたと感じていたのに、まるでなんでもないようにあしらわれました。
 その後、自分でもあんなことはなんでもないことだと思おうとしたのか、「すっごい気持ち悪かった~」と友達に笑いながら話したこともあります。あんなに泣きそうなくらいの、恐怖の出来事だったのに。

 あの時、母に慰めてもらったり、一緒に悲しんでもらえたり、相手を怒ってもらえたりしていたら、なにか変わっていただろうかと、数年経ってから考えるようになりました。自分をもっと大切にできて、誰かに自分を大切にされることも素直に受け入れることができて、自分の人生も変わっていたんじゃないか、なんて今でも時々思い巡らせてしまって、いい年していつまでも引きずってんじゃないよ、なんでも親のせいにするんじゃないよ、もう自分の責任だよ、ってもう考えても仕方なくて、せめてこの先は自分で自分が手ひどく扱われた時にそれを当たり前だと受け入れないように、自分を大切に生きてゆければいいのかなあと、春は残業せずに過ごしているのでした。

  一人ずつ痴漢に遭ったことあるか聞いてわたしを飛ばす女子会

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おとも
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女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
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