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川が好き。山も好き。
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先日の金曜ロードショーで『もののけ姫』を観ました。ジブリ作品は既に観たことがあるものが多く、そこそこの頻度でテレビ放映されるので、観れる限り観たい『思ひ出ぽろぽろ』以外は今日観なくてもまた次の機会に観ればいいかな、と見送ることもあります。特に『もののけ姫』は映画館で観たこともあり、テレビでくり返し観ることはしていなかったので、ずい分久しぶりにちゃんと観ました。

 久しぶりに『もののけ姫』を観て、やっぱりおもしろかったです。昔は敵のように見えたエボシ様は今見るととても恰好良くて。それぞれに思いがあって、どれが正解というわけでなく、様々に折り合いをつけて生きてゆく、ということは大人になった今の方が身につまされて感じ入るものがあります。
 触れると命が吸い取られると言って、暴走したシシ神様の透明な姿から水の中を皆で逃げ惑う場面などは、震災の津波を彷彿とさせるようでとても怖くなりました。震災より14年も前の映画に津波を感じるのも、不思議な感覚です。

 公開の1997年、何もない小さな田舎町の女子高生だったわたしは、友達3人で『もののけ姫』を観に行きました。学校帰りに、映画館のある山形市まで一時間に一本あるかないかのバスと電車を乗り継いで、今みたいに山形駅に映画館が直結もしていない頃のこと、どこをどうやってどこの映画館までたどり着いたのか、なんだかもうほとんど覚えていません。けれども、親の車がないとどこへも行けないような暮らしの中で、友達だけで制服を着たままこんなに遠出することは初めてで、まるで大冒険みたいでした。
 もう2人ほども誘ったのだけど「お金がない」と断られました。思えばほんとうにお金がなくてかつかつというわけではなく「そんなことにお金を使いたくない」という意味だったのでしょう。その子は他のことも「お金がない」と断ることが多く、そう言われてしまうとなにか決まり悪いような思いがしたものでした。
 一緒に行った友達の一人はその後サウンドトラックCDを買い、わたしにも貸してくれました。彼女はエレクトーンを習っていて、「アシタカとサン」という曲のエレクトーンとピアノの連弾の楽譜もくれました。命の芽吹きを感じるようなとても美しい曲です。わたしはピアノをがんばって練習したけれど、難しくて弾けるようにはなりませんでした。エレクトーンとピアノが一緒に置いてある場所もなく、友達と一緒に合わせて弾くことも結局ありませんでした。
 友達とは、高校卒業後の最初の夏に同窓会で再会したっきり、今となってはどこでなにをしているのか全くわかりません。当時は今のようにSNSなどもなく、ポケベルが衰退しPHSから携帯電話を持ち始めたような時代です。時々手紙を書くような友達もいましたが、一人暮らしを始めても携帯電話ではなく固定電話を引き、長らくメールアドレスも持たなかったわたしは人と疎遠になりがちでした。世の中の主流に合わせて通信手段も持ち合わせていれば、続く縁もあったのかなと時に寂しく省みることもあります。けれども、大人になってからのきっと難しい付き合いがきっぱりとないからこそ、楽しい青春の思い出として振り返ることができるのかもしれません。
 
 サントラを聴いて、楽譜をもらって、希望あふれる壮大な曲のように感じていた「アシタカとサン」は、実際に映画では控えめにしか流れず、その直後のエンディングの「もののけ姫」の歌声にかき消されてしまいました。それでもなんだか懐かしく、まだ楽譜が残っていたら再び挑戦したいと思いました。

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自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

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