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川が好き。山も好き。
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わたしの参加している結社の歌会では、歌会終わりに「歌集を読む会」という勉強会がある。一冊の歌集から好きな歌を一人三首ずつ選んで読む。先日の歌会では河野裕子さんの『森のやうに獣のやうに』だった。三首用意してあったものの、歌会が盛り上がって時間が足らず、駆け足で一首のみを読むことになった。

  わが髪の付きしセーターにふさふさと身を包み街を歩きておらむ

 と、いう歌をわたしは選んだ。街を歩いている恋人の身を包むセーターに、自分の髪の毛が付いている。相手の体に自分の一部が付いていて、それがなにかうれしい、というような気持ちが、ああ、わかるなあって。なにしろ駆け足だったので歌会では「変態っぽくて惹かれました!」とだけ発言して笑われてしまったけれど。

 短歌総合誌『短歌研究』からアンケート葉書きが届いた。「万葉集 私のこの一首」というものだった。正直に言うと、わたしは万葉集や古今和歌集や新古今和歌集や百人一首等々の区別が付いてない。有名な歌はいくつか知っているし、以前NHKで放映されていた『日めくり万葉集』なんて番組も毎日のように見ていたけれど、なんだかぼんやりしている。さてどうしよう、と思っていたら、自分の本棚に角川文庫の『ビギナーズ・クラシックス 万葉集』という本があった。助かった。
 持っていたのを忘れていたくらいなので、新鮮な気持ちで再読した。そうして選んだのは作者未詳のこの歌。

  朝寝髪 我れは梳らじ うるはしき 君が手枕 触れてしものを

 朝の寝乱れた髪を梳かすまい、いとしいあなたの手枕の触れた髪だから、という歌である。ああ、わかるなあって。

 河野裕子さんにしても、万葉集にしても、どこか似たような歌に惹かれたと気づく、髪を詠まれたというだけでなく、なにか残り香のようなものをいとおしく思うような。そして、昔のわたしならこういう歌に目が止まらなかっただろう、とも思う。わたしも変わったなあ。

***
 イカとズッキーニの煮物に、千切りじゃがいもと玉ねぎスライスのカレースープ。


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おとも
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女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
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