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川が好き。山も好き。
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 妹から宅配便が届いた。新婚旅行のお土産と、結婚式に寄せたウェルカムボードのお礼とのこと。お菓子やコスメと一緒に「処分しようかと思ってたけど読むかなと思って」と文庫本の小説が数冊入っていた。本好きなのでうれしい。

 同封されていた5冊のうちの3冊が、彼氏のいないアラサー独身女の悲哀、といったジャンルだった。
 い や が ら せ か !
 、というわけでなく、わたしがこういった傾向のものを読むと妹は知っているのだった。もともと妹とわたしの読書の好みは近く、以前会った際も芥川賞作家・西村賢太の可愛さについて熱く語り合った。姉妹して、ちょっとダメな感じの人間の物語に惹かれるのだった。とはいえ、一途な10年愛を実らせた妹が、なんでまたモテない女子の恋愛小説をこんなに読んでいたのだろう。妹なりに、なにか思うことでもあったのだろうか。
 ちなみに、残りの二冊は、夫の不倫によって離婚する夫婦の小説(この本はわたしも既に所持していた)と、社会の底辺で生きる市井の人々のドキュメンタリー短編集であった。
 早速読み進めてみたものの、思いのほかつらくなってしまった。別に、悲劇的な展開なんてどこにもなく、みんな一生懸命生きてるって、そういう話ばかりなのに。以前は好んで読んでいたようなものばかりなのに。 

 少し遡り、妹の結婚式へ向かう新幹線の中でのこと。道中に読もうと、一冊の文庫本を鞄に忍ばせていた。けれど、いざ読もうとしたらつらくて読めなかった。
 大好きな小説だった。大好きな作家の、映画化もされ世間的にも名の知れた名作短編集である。けれども、この小説で語られるような、貧民街で人間臭さを剥き出しに生きる庶民の人生のかなしさと愛おしさに、最近は少し目を背けたいような思いでいることに気づいた。
 泣きながら何度も繰り返して読んでいた頃のわたしの心を思った。「お勧めの本を貸して」と言われ、大切な思いでこの一冊を選んで貸したこともあった。「全部は読めなかった」と返してきた人の心を思った。

 世渡り下手で不器用な、世間的に落ちこぼれた人達に対する、作者の優しい視線の感じられる話が好きだった。ずっと好きだった。
 けれど、心に少しでも余裕がある時でないと、しみったれた話を受け止められないのかもしれない。
 今は、できれば底抜けにハッピーな話が読みたい。

   職安の二十八人待ちの間に周五郎読み泣くなよ、わたし

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自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

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