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川が好き。山も好き。
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3月に入ってから、なにげない雑談の中で、震災の頃の話題が出ることが多くなりました。東北で被災した人だけでなく、当時は東京にいた人も帰宅困難者としての体験や、仕事が中断した話、東北の家族と連絡のことなどを、昨日のことのように語り出します。「忘れてはいけない」「風化させてはいけない」などと言い聞かせなくとも、みんなあの日のことを語りたいのだとあらためて感じます。そうして、被害の大小にかかわらずどんな些細なことも、被災の一つなのだと気づかされます。

 わたしが避難所として泊まった文化センターが、追悼式会場になっていました。出席は見送りましたが、センターの外にも案内や警備の方がたくさんいたり、無料送迎バスが何台も出ていたり厳粛な空気が流れていました。
 あの日々のことを語ろうと思えば語れるのだけれど、自分の中では震災が過去になったという感覚が、ここ数年はしています。震災当時を忘れた、というわけではなくて、震災前の生活に執着がなくなったという心境です。あの時なくしたものを取り戻したいとは、もう思わない。
 とはいえ、また震災が起きたらまた同じようなことにくるしむようなわたしだろうということが懸念されるので、自分の心の偏りの矯正はしていかないと、思うのでした。

 職場に河北新報が置かれるようになったので、佐藤通雅さんと花山多佳子さんが選者をしている河北歌壇を久しぶりに読んでいます。震災にまつわる歌が毎回いくつか載っていることに少し驚きました。震災から5年目までの分は河北新報出版センターから『震災のうた 1800日の心もよう』という本にまとめられていて、とても良い作品集ですが、その続きが8年目の今までずっと続いています。震災詠というより、東北の人にとっては日常詠なのでしょう。常連の投稿者の方などは、被災してからの暮らしぶりが近況報告のように伝わってきて、詠み続けることの大切さにあらためて胸を打たれます。その時その時の今を詠った歌を追い続けながら、その人その人の人生に思いを馳せています。

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自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
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