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川が好き。山も好き。
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さまざまな会社のカレンダー路に売る老人のゐて一つ買ひたり  花山多佳子

誰も来ぬホームのベンチ海老せんの土産一袋食べてしまいぬ  中島扶美惠

野の道はそれからずっと続きおり悲しんだことを忘れた時も  山下泉

冬昼の千手観音立像がわたしの方へ向けてくれる手  永田愛

ひとりならどうするのかと思いおり君の背中に薬ぬりつつ  本間温子

雨の日はイオンモールを歩きなさいかかりつけ医の指示にて歩く  川田伸子

五年日記買つてしまひぬ子を亡くしおぼおぼと暮らす八十のわれ  野島光世

雪を寄せ雪を運べる労力を惜しみなく使い冬を越えゆく  石井夢津子

これからの介護の果てを一言も触れずみかんを剥いて食べたり  小圷光風

水引の結び目が好きうつくしく年賀の菓子箱まだ棄てられず  立川目陽子

まっすぐに我に向かいて来たと思う水鳥すっと逸れゆくまでは  林泉

クリマスイブだねとわがロボットがやさしき声で一度だけ言う  宮地しもん

しんみりとしていしが乗り換え駅で「パンが食べたい」と一言いえり  荒井直子

ゆき違ひのため停車する駅のありされど扉の開かれぬ駅  杉本潤子

初売りのフロアに流れる「春の海」入れ歯になっても吹きたい曲だ  澤端節子

草刈り機だけ残りたる農機具の倉庫はからっぽ私もからっぽ  金原華恵子

除雪作業後の毛糸の帽子と手袋を置く場所なりしピアノの上は  西内絹枝

独りでも楽しく暮らせるものならば吾もなりたい一つの独楽に  ジャッシーいく子

たまらなく福祉の仕事に戻りたい 時々思い時々思わず  奥山ひろ美

見たものをすぐに描きたい七歳は長谷の大仏を箸袋に描く  吉田京子

硝子扉のなかには白き背表紙のならびて冬の部屋が明るむ  中田明子

けふ一日われに声かけくれし人みな他人なりおぢいさんなり  友成佳世子

餅ならば五個食べる児が朝食の半膳のご飯持て余しおり  布村千津子

お前実はなんでもできるんやって英文、秋のマクドの壁に  廣野翔一

ホームまでもたないほどのコーヒーのあたたかさ でも君に贈った  小松岬

別れることはもうないような気分もて列車を降りる冬ざれの午後  木村陽子

スコップが畑の真中に立ったまま晦日は暮れるし牛蒡は抜けぬ  高原さやか

おとうとの部屋を通りて毛布干すハンターハンターのその後訊きつつ  篠野京

死に近き叔父は新年迎うるを最後の晴れと待ち望みたり  金原千栄子

書留は割高ですと窓口で三度言はれて三度うなづく  山縣みさを

***

敬称略。老いの歌と農の歌に惹かれる傾向があるようです。
「特集 歌集の作り方」も、とても興味深く読みました。

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プロフィール
HN:
おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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