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川が好き。
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恋人が転勤していて遠くに引越していました。もうずっと会っていなくて、実質終わっていたのだけれど、わたしが自分の中で区切りをつけた頃に向こうから当たり障りない連絡があったりして、当たり障りなく返したところでした。そうして新年度に入って確認したら、もう引越し済みとのことでした。
 最初は、嘘を吐いているんじゃないか、と疑いました。仕事帰りに、彼のアパートへ行ってみました。思えば、一人で赴くのは初めてです。夜の道を少し迷いながらたどり着くと、駐車場に見慣れた車はなく、カーテンの外されたベランダの窓から、空っぽの部屋が見えました。

 初めて部屋に招かれた時、すました顔からは想像つかないくらいの汚さにびっくりしたのを覚えています。テーブルがないため、ご飯を食べたりお茶を飲んだりする場所すらありません。そもそも座る場所がありません。それでも、会議用の長机(これが部屋にあるのがおかしい)の上の卓上カレンダーに、わたしと会う日にマルが付けてあるのを見つけ、かわいいなと思いました。常飲しているような感じでいつも置いてあるロキソニンが気になっていたけれども、デリケートなことだと慮り、何も聞きませんでした。

 それにしても、あの物だらけのごちゃごちゃした部屋がよく片付いたなあ、と妙に感心してしまいました。
 もっと早く来ていたら何かが違っていたのかもしれません。けれども、自分に置き換えて、感情にまかせて家に押し掛けられたり、会社に来られたり、しつこく連絡されたりしたら怖いな、と思い、自分から白黒つけるようなことはせずに静観していました。
 わたし達はケンカもしたことがなく、向こうに何か事情があったのか、わたしに対して何か思うことがあったのか、結局のところ、何もわからずじまいです。原因があるなら知りたかったし、話し合いもしたかったけれど、どっちにしたって別れ話の一つも切り出さず自然消滅に持ち込もうとするような人は、きっとこの先の人生でも何かあったら逃げるのでしょう、不誠実な人だったのだ、と納得させることで、自分を責めがちな心をなぐさめるしかありません。

 普段はほとんど自分の色恋エピソードを語らないわたしだけれども、あまりにあんまりな体験だったので、翌日、お昼の休憩時間に笑い話として同僚さんに話しました。第一声が「お金貸してないよね!?」でした。
 みんな笑ってくれましたが、自分の別離経験を話してくれた人もいました。そして、シフトの関係で次々に仕事に戻ってゆき、普段は人一倍おちゃらけて自虐的に明るい年上の女性と二人になった時に、「忘れるのは時間がかかるだろうけれど、ゆっくりでいいんだよ。私も数年前に別れた人がいて、今でもふとした時にあんなことあったなーって思い出して泣けてきたりするんだよ」というようなことを言ってくれた時、初めて泣きました。「次行こう、次!」と笑い飛ばしそうなイメージだったのに、わたしもそうしてもらうつもりでことさら元気に話したのに、自分の実体験から親身になってくれたのが伝わってきたのでした。

 東北の桜も散り始めました。怒ることも縋ることも恨むこともしないと決めて、新しい季節へ踏み出してゆきます。

  「思い出ができただけでもよかったよ」すべてをゆるす魔法の言葉

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