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川が好き。山も好き。
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角田光代さんの小説は自分には絶対に合わないのだろうと、一作も読む前から思っていた。一作も読む前から、雑誌かなにかで、「自分は彼氏主義で、彼氏がいないという状態が耐えられない。彼氏がいなくなると、すぐ次の彼氏を作る」というようなインタビューを読んだのだ。
 相容れない人だと思った。当時のわたしは恋愛嫌いで、恋愛脳の人を冷ややかな目で見ていた。たとえば学生時代の友人のあからさまな恋愛>友情な有様に辟易していたのもある。わたし自身が自分の女性性を肯定できずに育って、Aセクシャル気味に陥ってしまっていたのもある。とにかく、恋愛至上主義な思考には嫌悪感があったため、件のインタビュー記事にケッと思ったのだ。

 初めて角田光代さんの小説を読んだのは、「ダ・ヴィンチ」に掲載されていた短編だったと思う。単行本ではないから偶然に読めたのだと思う。単行本ならば、インタビューでの先入観から手に取らなかった。
 あれ? おもしろいな、と思った。てっきり、恋愛脳バカ女の出てくるくだらない小説かと決めつけていたのに。そんなふうにわたしの認識が変わってきた頃、角田さんは『対岸の彼女』で直木賞を受賞した。

 それから数年後、ある日、わたしは失恋した。失恋の痛みを引きずる日々の中で、角田光代さんの短編小説が読みたい、と、ふと思った。初めて著作を購入し、読んでみれば、なんだかぶきような恋の物語ばかりで、ぶきようなわたしの心にすっとなじんだ。
 それから、『だれかのいとしいひと』『トリップ』『ドラママチ』『おまえじゃなきゃだめなんだ』いくつも短編小説を購入しては読んだ。通勤のバスの中で、仕事の休憩中に、ちょっとした待ち時間に。これからもいくつも読むと思う。どこかぶきような人達の物語を、わたしは好きだと思った。
 今では、角田光代さんは「好きな作家は?」と聞かれて、答える作家のの一人である。

  バスのなか角田光代を読みており明日は予定のない日曜日

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女流作家さん
角田光代さんの他にも

恩田陸、小川洋子、川上弘美、青山七恵、江國香織、絲山秋子あたりがよく似た年代または色合いの作家で、わたしがひと通り読んだ人です。
三浦しをんさんもいたなあ。

でもね、男性作家のほうが、根っから好きみたいですけど、ちょっと肩の力を抜きたいときに読みますね。
ねこさん URL 2015/06/04(Thu)19:20:35 編集
Re:女流作家さん
ねこさん、こんにちは。小川洋子さん、川上弘美さん、江國香織さん、三浦しをんさんは読んだことがあり、とりわけ川上弘美さんの『センセイの鞄』はお気に入りの一冊です。
他に好きな女性作家さんは、年代はバラバラですが向田邦子さん、北原亞以子さん、田辺聖子さんなどです。
男性作家さんの本もよく読みますね。読書談義は楽しいです。
【2015/06/04 19:36】
向田邦子
向田邦子は別格ですね。

あの人を本当に理解するのは奥が深いし味わいも深いので難しいですよ。

あなたのように時代が違う人は、あの人の昔の情景の部分は実感のない分だけ理解できない面もあろうかと思います。
ある種の(平安時代の)古典を読むに似ているかも(言い過ぎかな)

でも、父の詫び状など、涙がでること絶えることなし、な状態ですね。
ねこさん URL 2015/06/05(Fri)14:14:55 編集
Re:向田邦子
向田邦子、現代のわたしが読んでもおもしろいですが、同時代を知っていたらさらに味わい深く読めるのでしょうね。『父の詫び状』も持ってます。脚本を手がけられたドラマなどもいろいろ見てみたかったです。
【2015/06/05 19:33】
向田さんのドラマ
今のお笑いが一発瞬間の面白みでやってるとすると、古典的なのはしゃべくりとか落語とか講談とかに似ていて、話を味わって聞き手に噛み締めてもらって面白みを出してたと思う。

ドラマも、向田さんのドラマってのは、今のドラマのように瞬間でかっこいいのが連続してる(俳優も)……みたいなんじゃなくて、ちゃんとドラマになってるのですよ。役者がきちんと演じないと詰まらなくなるようなドラマなんです。

だから、いいシナリオの向田さんで、味を出せる監督さんだと、何がいいのかわからないのにズルズルと引き込まれるの。

時代が違うので、今はそういう時代ではないといえばそれまででしょうが、わたしはそういうドラマを見て若いころを送りました。

今はまったくTVは見なくなりましたね。もう見たいものが何一つ無い。ご飯食べているときに後ろでガナリ立てている番組なら結構知ってますけどね。(食事時間が呑兵衛で長いので・笑)
ねこさん URL 2015/06/06(Sat)16:23:41 編集
Re:向田さんのドラマ
昨今のテレビ番組のように消費されてゆく文化もありますが、残ってゆくものはいつの時代に味わっても色褪せないおもしろさがありますね。古典落語や向田ドラマもそういったものだと思います。わたしが昭和趣味なのも、そうした残ってゆくものの確かさを信じているからなのかもしれません。
【2015/06/07 21:19】
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自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

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