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川が好き。山も好き。
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はらい一つ足りないような喪という字二回も書いて午後の手紙に  前田康子

やれば出来ると思いつつ今日も何もせず猫じゃらししごきて歩く  岩切久美子

取り返しのつかぬ筋目をつけながらむらさきいろの鶴を折りゆく  梶原さい子

何の肉かと思えど冷凍ミンチカツとろりとチーズ溶け出してくる  川本千栄

脚立より落下せし子は柿の実と共に斜面を転がりてゆく  吉岡洋子

九十歳に砥ぎてもらいし裁ち鋏さりさり使う秋の夜長を  西本照代

幸せをどこかで言おうでもそれは呟きでないところと思う  山内頌子

寒いからさみしいのかな ゆっくりと三十代の日々は過ぎゆく  片山楓子

くたびれてどうにもならず湯の中のマカロニの穴もおそろしくなる  永田聖子

かじかんだゆびで絵筆をあらうときシンクに消えてゆく秋の川  田村龍平

意地悪もかつては言ひし古き友わたしを忘れ遠い目をせり  西山千鶴子

二日後に乳癌の手術する妻の寝息の聞こゆ我も眠らむ  熊野 温

石はみな石という名で括られて陽を浴びており竹田川沿い  佐々木美由喜

伊勢神宮熱田神宮名古屋城今年も良いことありますように  高橋圭子

立ち話している二人のおばあさんに手を振りて行くおじいさん一人  西川照代

ブーケ買う夢を今朝方見しことを花屋の前で思い起こせり  深井克彦

亡き母の眼鏡を父は掛けてゐし炬燵の端に本を読むとき  守永慶吾

主役へと花束渡す役これがわたしのしたいことだつたんだ  逢坂みずき

腰かけるつもりの石にとんぼ来ぬ も少し歩いてみるのもいいか  今井早苗

母とその赤子に席を二度ゆづり二度断られ出づれば秋雨  篠野京

図書館の屋上庭園のために出てきたかと思う鰯雲  杉田菜穂

あの時は泣けばよかつたかもしれぬ金木犀は花零すのみ  祐徳美惠子

わが髪を撫でつつ君が言うときの「もう寝んさい」はやさしい命令  福西直美

ずっと前滅びた国の逸話から水道代の話に戻る  森永理恵

日銀で鑑定なさねば替えられぬ一万円札 吾が破きたる  浅野次子

いつも和服着ておりし人ジーパンに自転車で来る夫亡きのちは 相本絢子

名を呼べど帰り来るはずなきものを日暮れになればやはり名を呼ぶ  木戸洋子

ちゃん付けで吾を呼びしは百歳の叔母一人のみ昨夜逝きたり  清水千登世

割りばしは歪にわれて駅弁のかまぼこつまむ見舞いの帰り  寺田裕子

昼食を食べたくなくて階段を上ったり下りたりをしている  佐原八重

***

敬称略。3月号が届く前に。

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プロフィール
HN:
おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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