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川が好き。山も好き。
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月日の経つのはほんとうにあっというまで、12月の12日13日、結社の忘年歌会で福島県の飯坂温泉に行ってきました。
 なに分初めてなもので、方向音痴のわたしは「ちゃんとたどり着けるかなー」と不安だったのですが、仙台から福島への電車の中や、福島駅のホームなど、次々に参加者の方々と遭遇し、無事に会場まで行き着けました。



 飯坂温泉は、いい感じの鄙びた温泉街でした。葵館での歌会の後は、宿泊先の新松葉旅館に場所を移して懇親会。忘年歌会ということで、久しぶりに会う方や滅多に会えない方もいながら、話は尽きず、日を跨ぐほどの時間までの語り合いでした。またこの新松葉旅館というのが、絵に描いたような古い宿で、作りもいろいろ懐かしかったです、トイレの鍵とか。
 地味に衝撃的だったのが、宴会参加の男性陣全員がすね毛を剃っていた、という事実です。剃るものなのか、浴衣の裾からのぞくすね毛が良いんじゃないか!(参加メンバーのそれが見たいというわけでは、決してありません。)



 翌日は旧堀切邸へ。邸内の手湯や足湯が心地良かったです。部屋の貸し出しもしているということで、来年の歌会はここで行おうという話にもなりました。



 福島歌会へはわたしは普段は日帰りで行くのですが、わざわざ飯坂温泉に宿を取り参加してくる人のいるのがわかったような気がしました。わたしも金銭的に余裕があったらそうしたいものです。

  赤い帯うまく結べずスカートのように浴衣がひろがってゆく

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11月末に、実家に帰ってみました。関東に嫁いだ妹が赤ん坊を連れて帰省しているのです。赤ん坊を実家に連れてくるのは初めてなので、赤ん坊と会うのは初めて、妹と会うのもなんだかんだで2年ぶりです。
 
 久しぶりに会う妹は、新米ながらもうすっかりお母さん。そんなに子供好きではなかったはずなのに、我が子にはめろめろでした。初めて見る甥っ子は、そりゃあもうかわいくて、ずっと抱っこをさせてもらいました。ただ、一日子守りをしただけなのに、体がぐったりで、子育ては体力がいるってほんとうなんだなあとあらためて実感しました。妹の子だから軽く子守りもするけれど、これが我が子で毎日続いたら正直耐えられる自信がありません。
 父と弟はぼんやりしていましたが、母は初孫のためにわたし達をおぶったおんぶ紐やねんねこを引っ張り出してきたり、88歳の祖母はひ孫に歌ったり話しかけたり、家が明るんでいるのを感じました。

 祖母、父と母、わたしと弟、妹と赤ん坊。こんなふうに家族全員が実家に揃うのは、この先も滅多にないでしょう。妹は初の実家へのお披露目と、関東での引越しの関係もあってお正月過ぎまで実家に滞在するようなので、その間にわたしもまた帰れたらいいな、と思っています。
 ちなみに、甥っ子はキラキラネームを付けられており、今のところ家族は誰も名前では呼ばず、「んぼこ」(山形弁で赤ん坊のこと)と呼んでおります。

 実家にいる間、BSで原節子追悼で小津安二郎監督の『東京物語』を放映していました。DVDも持ってるほど好きな映画ですが、せっかくなので見ました。
 『東京物語』は今さら説明するまでもない名作映画ですが、老夫婦が尾道から上京して子供達に会いに行ったところ、東京で自立している子供達にないがしろにされる、というような内容です。何回か見たのですが、この日は、笠智衆と東山智栄子演ずる老夫婦の「子供と孫では孫の方がかわいいと言われていますが、どうですか?」「やっぱり子供の方がかわいいなあ」というような会話が妙に印象に残りました。

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国民年金保険料追納のご案内ハガキが届いた。去年の無職だった頃、国民年金の納付を免除してもらっていたのだ。

 印字されていた金額は、払えない額ではないけれど、今のわたしの月給の半分くらい。それなりに、大きい。
 免除してもらっていた分を追納すれば、将来もらえる年金が増える。免除分は、このままだと半額支給になる。老後のことは心配だ。とはいえ、手元の現金を一気に失うことは、こわい。それに、わたしが年金をもらう頃に年金制度がどうなっているか、破綻しているかもわからないし、手元に残しておく現金を将来のために貯金していたっていいし、自分のために遣ったっていい。

 結局、追納はしないことにした。悩むけれど、とりあえずは今を大切にしたい。

  文庫本しのばせてゆく晴れた日の国民年金免除手続き

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手のひらをゆるしてしまう手のひらを捧げてしまう獣のように

  階段をゆっくり上がってゆく恋だ来週たぶん鎖骨にさわる

  紐を引き蛍光灯を君が消す 蛍光灯が君越しに見ゆ

  産み終えしのちのいもうとの饒舌なメール キラキラネーム名付けて

  山吹のミツビシ鉛筆カバンから君は取り出し甥の名を聞く

  帰り来るもののあることうれしかり君が借り行く藤沢周平

***

 三首目の歌は、今月の百葉集に採っていただきました。百葉箱で吉川さんに「「蛍光灯」だけをクローズアップして歌っているが、恋の思いの溢れる一首」等々評もいただけてうれしいです。

 九月号特別作品評で森さんに「包丁の音」のタイトル歌の評もいただきました。丁寧に読んでいただけてありがたいです。

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年下の女の子に「DVDで恋愛映画を見たいからおすすめを教えて」と言われたので『ジョゼと虎と魚たち』を超絶おすすめしたところ、「エロ過ぎ。恒夫みたいな浮気男は最低。この映画のどこが良かったんですか?」と不評でありました。妻夫木聡さんと池脇千鶴さんが役柄にハマってて、くるりの音楽も良くって、いじらしくて、せつなくて、わたしは大好きな映画なんだけどなー。

 先日、仙台フォーラムで『先生と迷い猫』を見てきました。ファースト・デーで映画が1100円の日にお休みだったのです。わたしは偶然にレディース・デーや映画デーなどに休みが当たったら、映画を見にゆくことに決めています。
 妻に先立たれた一人暮らしの元校長先生と猫と、町の人達のお話。
 どれを見ようかな、『バクマン』も見たいな『岸辺の旅』も見てみたいなあって迷いつつ、これ!と選んだのだけど、一緒に見に行った方が途中で寝ていました…なんだか申し訳ない。そんなふうに少し地味な作品ではありましたが、人情味あふれるユーモアたっぷりのあたたかい映画でした。たぶんほとんどの観覧者の方々が猫に萌えている中、わたしは主人公のカタブツで偏屈な元校長先生を演じるイッセー尾形さんに萌えていました。ファンなのです。
 わたしはペットを飼いたくない主義なのだけれど、それはこの映画の最後に元校長先生が語る、猫を追い払おうとしていた理由と同じで、なんだか胸にくるのでした。


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 先日、山形美術館で「飛塚英寿――出羽の里びと」という展示を見てきました。写真家・飛塚英寿さんによる昭和30~40年くらいの山形の人達の写真。わたしは昭和55年生まれだけれど田舎の昔の文化が残っている地域に育ったこともあり、郷愁をそそられるものがありました。被写体が人である、というところがとても良かったです。表情や仕草、服装など、言葉のように胸に伝わってくるものがありました。特に、今は人が住まなくなっている白鷹町のある集落の人達の写真を興味深く見ました。同行の人のお祖母さまの故郷だったのですが、昔は普通に暮らしが営まれていたものの、山奥で不便過ぎたので集団で離村したそうです。そうした暮らしの風景や離村時の写真は、3・11の原発事故の放射能の影響で避難区域になり地元を離れざるをえなくなった福島の人達にも重なって見えました。
 常設展はピカソやシャガール、モネなどの絵画でした。が、写真展がすてき過ぎてあんまり印象に残っていません。
 
 写真は短歌に通じるものを感じます。この瞬間を切り取るかっていう感覚。写真展を観賞して、わたしは短歌の記録性に惹かれてるんだな、とあらためて気づきました。写真を撮るように短歌を詠いたい、と思いました。

 美術館の後は、久しぶりに山形市の街中、七日町を歩きました。中学生や高校生の頃、山形市に遊びに行くと必ず訪れていたaz七日町ビル、本を購った八文字屋書店、楽譜を求めた富沢本店、食事をしたイタリアンレストラン・チロル。郊外にショッピングモールができ始めたこともあり、山形の中心街は廃れてきたなんていう話も聞いていましたが、昔よく立ち寄ったお店は今でもがんばっていて、懐かしかったです。

  一人旅装うブログ打つ君の携帯カメラに写らぬわたし

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なにげなく腕に触れられわたくしがわたくしになる森林公園

  『サラダ記念日』手に取る君の指の毛をながめていたり文学館に

  ありがちに展望台で夜景見てありがちに口吸われておりぬ

  心病むおとうとを持つ姉であることをいつまで黙っていよう

  君からのメールの返事短くて少しうすめのカルピスを飲む

  「思い出ができただけでもよかったよ」すべてをゆるす魔法の言葉

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仙台文学館で特別展「竹久夢二・詩と絵の世界――愛と、ロマンと、漂泊と」を見てきました。夢二作詞の名曲「宵待草」の流れる展示会場で、大正ロマンあふれる夢二の美人画を堪能しました。モデルとなった、夢二に関わりのあった3人の女性などの写真もあって、興味深かったです。離婚した元妻との間に離婚後にも子供を設けるとか!

 お食事処「杜の小径」の特別メニューは、牛肉の煮物、鰯の南蛮漬け、ご飯、かぼちゃのポタージュ、ぶどうジュース等ほんのんり西洋風の定食。夢二の日記を元にしたそうです。美味しくて、期間限定なのが惜しいくらい何度も食べたくなる味でした。

 資料室の一角での「梶原さい子歌集『リアス/椿』短歌と写真」という展示も見てきました。『リアス/椿』はほんとうに大切にしたい歌集で、さい子さんと同じく気仙沼出身の写真家である佐々木隆二さんの写真もとてもすてきでした。こちらは10月末までの展示です。

 文学館の帰りは台原森林公園を散歩して一回りしました。スカートを履いていて、夏も終わりと思い虫除け対策をせずにいたら、脚を5箇所ぐらい虫に食われてしまいました。旭ヶ丘駅近くまで来ると、金木犀の香りがしました。もうそんな季節です。


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包丁の音

  「また姉妹で温泉行こう!」婚約を伏せた賀状の添え書きなりき

  十年を待たせて腹をくくりたるごとくいもうとは二十九で嫁す

  いもうとに先を越された姉なるをネタの一つとして笑いたり

  両親へ「子育て終了証」としてアルバム送りたるいもうとは

  「おねーちゃんへ」御車代として熨斗に貼られていたり黄色の付箋

  いつまでも帰る場所ではないような実家で作るナスの肉詰め

  犬のために生きてるような友がいて未だ嫁がず十四歳上

  寝そべったその身をひねり手術痕舐めているなり雨の雄犬

  くちびるで舌で触れるということの、あなたの(わたしの)獣を怖る

  あれはどこのじいさんと思えば父なりき畑で鍬を振るうすがたの
 
  たぶん行くことはもうない父親の実家にあった鰹節削り
 
  当たり前のように誰かがいることの未知まぶしくて大根を煮る
 
  包丁の音であなたを待たせてた時間をわたし仕合わせと呼ぶね

  独り居の友ことごとく犬猫と暮らしておれどわたしは飼わず

***

 特別作品に掲載していただけた連作。三井さんの評によれば「家族との微妙な感情をあまり深刻にならず、さりげなく描いている」とのこと。

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母子家庭の母子受講料免除なればシングルマザーの介護士多し

  元営業元販売員元編集元警察官現皆介護士

  タミィは施設(※ルビ ここ)のパティシエ!なんて褒めそやされ仕事が楽しかったあの頃

  お下がりの介護ベッドにシルバーカー使いて祖母の八十八歳

  面接に行けば必ず「結婚のご予定は?」って聞かれる三十路

  長電話するために長電話しているような長電話なりけり

  幸せはきれいな寝巻きで眠ること取り込みたての白いシーツで

  雨の日がああ待ち遠しい新しく赤い雨傘購いしため

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プロフィール
HN:
おとも
性別:
女性
自己紹介:
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/本体¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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