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川が好き。山も好き。
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くたびれたペタンコ靴で踏みしめてゆく駅までの道や暮らしや

  ひもすがら蛍光灯をひからせてオフィスオフィスとにぎやかなりき

  凌様と名を打つ時は凌辱と打って一文字消し入力す

  函館への旅の約束いつしらに流れてゆけり握り飯食む

  駅前のスターバックス四階に心療内科とろりとありぬ

***

 函館、行きたかった…。今の職場の休憩室の大きな窓からは、函館へ向かう新幹線が見えるのです。

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また家が壊されている十五年わたしが通った道だ、一人で

  余震なり臨時ニュースの声も灯も揺れ湯あがりの身は冷えてゆく

  この部屋を出たいけれども ベランダの鉢に大葉の種を植えたり

  「大安だー」と祖母はよろこぶ初めてのデイサービスに赴ける日を

  牛乳を買いに自転車走らせるわたしの肩にてんとう虫は

***

 今月号の「特集 マンガと短歌」にもエッセイと短歌を載せていただきました。漫画にまつわる、活字にはなってなかった短歌があり、過去作なので今さら月詠に出す感じでもなくて、でも思い入れのある一首だったので、こうした機会があってよかったです。皆さんのエッセイも愛にあふれて楽しく読みました。
 選歌欄評で、川上さんにほうれい線の歌の評をいただきました。思いのほか寄り添って読んでいただきありがたいです。

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右の窓に千本桜映りおればみな右を向く満員電車

  二本松高村智恵子記念館お手洗い場のレモン石鹸

  さくらさくら愛想悪さで名の知れたとんかつ屋さんの一本ざくら

  九州へ向かう自衛隊とすれ違う東北道のサービスエリア

  被災地と呼ばれる土地と被災者と呼ばれる人が増えゆく四月

  九州の震える夜に一人きりさまよえる5年前のわたしがおるらん

***

 レモン石鹸、わたしは『智恵子抄』の「レモン哀歌」にちなんで置いてあるのかと思い、歌会や今月号の選歌後記でもそう読まれているのですが、単に安いとか物品購入などの都合ではという話も聞き、謎なのです。

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 最近、更新が停滞しております。と、いうのもわけがありまして、パソコンが古いせいか幾つかのサイトでは表示が崩れてしまい、ブログの提供元もその一つなのでした。入力ができないのです。
 携帯電話のメール投稿もできるようにはしてあるものの、わたしはガラケーであり、これも文字打ちが大変なのでした。
 
 この手でこの目で触れるものを大事にしたい、インターネットが当たり前という環境にはなじみたくない、と常日頃思っているわたしではありますが、やっぱり今の時代はネット不調だと不便なこともあるとしみじみ身に沁みる日々です。ネットでしか確認できない給与明細は見られないし、夏の旅行の宿泊先のネット予約フォームが表示されず、お忙しい中を電話で対応して頂いたり、自分だけでなく相手方にもお手数かけてしまうのを心苦しく感じます。パソコンを新調すればいいだけなので、大きな買い物をする余裕のできるのを待っているところです。

 読みに来てくださる皆さま、拍手を押してくださる皆さま、ありがとうございます。


 

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地下鉄の窓に映れるわたくしのほうれい線よ三月四日

  誰の手でもいいわけじゃない誰かの手を握りたいのは確かだけれど

  ヘリコプターの音ひびきおり五年目の三月十一日仙台の朝

  捜されている人がいて一人暮らしのわたしは一人部屋片付ける

  五年目の三月十一日ゴミ出しを済ませひねもすテレビを見てた

  異常無しと診断されるばかりなり震災より続く月経不順

  忘れるという復興もありましょう わたしは忘れ生きてゆきます

***

 江戸雪選歌欄評、わたしの担当は今月号までです。評を書くにあたり自分で決めていたことが二つありました。一つは「作中主体」「主体」という言葉を使わずに、「作者」と言い張ること。もう一つは、詠われていることは実景、実体験だと決め付けること。そんな感じで、評というより詠われている場面の感想のようなところもありましたが、それは「この場面の切り取り方、いいなあ」と思って選歌していたのでした。文法、修辞などはほんとうにわからないので、毎月いっぱいいっぱいでしたが、良い経験でした。半年間お読みいただきありがとうございました。

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原節子の訃報を知りし日の夜に逢瀬の約束反故となりたり

  縁談をぼてりとかわす暖冬の東北に降る一月の雪

  地下鉄の駅から五分 地下鉄の駅構内を十分歩き

  もうわたしは子供にあらずR指定映画も実の母と見にゆく

  コンビニに眠れるCDなくなりて痩せるCD置かれる二月

***

 母と見に行った映画は宮沢りえさん主演の『紙の月』でした。去年の話です。

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ふるさとを失くしたような寂しさだ本家の父ちゃん死んでしまった

  ランニングシャツ着ていつも畑に居た本家の父ちゃん死んでしまった

  一昨年の盆に本家の父ちゃんとゼリーを食べたのが最後なり

  血縁はなくて本家の父ちゃんのお葬式には行かないままに

  われの持つ一番高い洋服は喪服 社割で一八〇〇〇円

  奥羽山脈越えた向こうの農村の葬列を思う雪の降る日に

  笑い顔だけしか思い出せないやいつも笑っていた人だから

***

 親戚でもなく単なる近所付き合いでもない本家とか分家とかいう繋がりは、わたし達の世代ではもうすっかり薄くなっています。本家の父ちゃん母ちゃんまでは行き来もありましたが、その50代の息子さんとなるとわたしはほとんど面識がありません。だからこそ、いつか消えてゆく言葉を、詠んで残しておきたく思うのでした。

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 熊本地震から一週間が過ぎました。今でも大きな余震が続いているようで、心配に思います。わたしは5年前に東日本大震災に遭い、避難所での宿泊も経験しました。ライフラインの途絶える不便さも、余震にふるえる夜も、先の見えない不安も覚えています。また、あの頃のわたしのように、誰にも頼れず、一人でがんばってしまう被災者の方もいるのではないか、他人事でない胸の痛みを感じています。
 九州のために、東北のわたしができることを探しています。

  東北に桜咲くころ熊本に地震来たれり試験紙のごとく

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 映画「家族はつらいよ」を見てきました。山田洋次監督による、小津安二郎映画「東京物語」のオマージュ作品が2012年の「東京家族」、その同キャストによる新作喜劇です。橋爪功さん演じるお父さんと、吉行和子さん演じるお母さんの熟年離婚をめぐる一家の大騒動。長男は西村雅彦さん、そのお嫁さんが夏川結衣さん。長女に中嶋朋子さん、夫は林家正蔵さん。次男は妻夫木聡さん、恋人が蒼井優さん。音楽は久石譲さんです。

 わたし、今年見た映画のベスト1はこれに決めました。人物それぞれに人間味があり、それゆえただようペーソス感がたまらない。いちいち小ネタが効いていたり、山田洋次監督の代表作「男はつらいよ」がちゃっかり宣伝されていたり(映画館にリバイバル上映としてポスターが貼ってある、家にDVDが揃ってある等)、「男はつらいよ」のテーマ曲が歌われたりもしました。「東京物語」に重ねた場面ではしんみりしつつ、ひたすら笑いっぱなしの108分でした。館内も、笑い声やツッコミの声が絶えず、楽しさをみんなで分け合えたような思いがしました。とても愉快な気分でした。
 今年これからもいくつか映画を見るでしょうけれど、たぶんわたしはこの映画が一番好きです。

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一〇三万以下で働きたい人の多ければなごなごする職場

  三十も過ぎて職場で泣くなんて痛々しいな わたしのことです

  「田宮さんが頑張ってるのわかってるよ」次々皆に言われかなしい

  とりあえず昨日も今日も昼ごはん一緒に食べる人がいて、雪

  好きだった前の仕事の夢を見たスケープゴートになる前までの

  生きてゆく 小雪降る夜を歩きつつ生きてゆくなり傘も差さずに

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プロフィール
HN:
おとも
性別:
女性
自己紹介:
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/本体¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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