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川が好き。山も好き。
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地下鉄の窓に映れるわたくしのほうれい線よ三月四日

  誰の手でもいいわけじゃない誰かの手を握りたいのは確かだけれど

  ヘリコプターの音ひびきおり五年目の三月十一日仙台の朝

  捜されている人がいて一人暮らしのわたしは一人部屋片付ける

  五年目の三月十一日ゴミ出しを済ませひねもすテレビを見てた

  異常無しと診断されるばかりなり震災より続く月経不順

  忘れるという復興もありましょう わたしは忘れ生きてゆきます

***

 江戸雪選歌欄評、わたしの担当は今月号までです。評を書くにあたり自分で決めていたことが二つありました。一つは「作中主体」「主体」という言葉を使わずに、「作者」と言い張ること。もう一つは、詠われていることは実景、実体験だと決め付けること。そんな感じで、評というより詠われている場面の感想のようなところもありましたが、それは「この場面の切り取り方、いいなあ」と思って選歌していたのでした。文法、修辞などはほんとうにわからないので、毎月いっぱいいっぱいでしたが、良い経験でした。半年間お読みいただきありがとうございました。

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原節子の訃報を知りし日の夜に逢瀬の約束反故となりたり

  縁談をぼてりとかわす暖冬の東北に降る一月の雪

  地下鉄の駅から五分 地下鉄の駅構内を十分歩き

  もうわたしは子供にあらずR指定映画も実の母と見にゆく

  コンビニに眠れるCDなくなりて痩せるCD置かれる二月

***

 母と見に行った映画は宮沢りえさん主演の『紙の月』でした。去年の話です。

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ふるさとを失くしたような寂しさだ本家の父ちゃん死んでしまった

  ランニングシャツ着ていつも畑に居た本家の父ちゃん死んでしまった

  一昨年の盆に本家の父ちゃんとゼリーを食べたのが最後なり

  血縁はなくて本家の父ちゃんのお葬式には行かないままに

  われの持つ一番高い洋服は喪服 社割で一八〇〇〇円

  奥羽山脈越えた向こうの農村の葬列を思う雪の降る日に

  笑い顔だけしか思い出せないやいつも笑っていた人だから

***

 親戚でもなく単なる近所付き合いでもない本家とか分家とかいう繋がりは、わたし達の世代ではもうすっかり薄くなっています。本家の父ちゃん母ちゃんまでは行き来もありましたが、その50代の息子さんとなるとわたしはほとんど面識がありません。だからこそ、いつか消えてゆく言葉を、詠んで残しておきたく思うのでした。

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 熊本地震から一週間が過ぎました。今でも大きな余震が続いているようで、心配に思います。わたしは5年前に東日本大震災に遭い、避難所での宿泊も経験しました。ライフラインの途絶える不便さも、余震にふるえる夜も、先の見えない不安も覚えています。また、あの頃のわたしのように、誰にも頼れず、一人でがんばってしまう被災者の方もいるのではないか、他人事でない胸の痛みを感じています。
 九州のために、東北のわたしができることを探しています。

  東北に桜咲くころ熊本に地震来たれり試験紙のごとく

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 映画「家族はつらいよ」を見てきました。山田洋次監督による、小津安二郎映画「東京物語」のオマージュ作品が2012年の「東京家族」、その同キャストによる新作喜劇です。橋爪功さん演じるお父さんと、吉行和子さん演じるお母さんの熟年離婚をめぐる一家の大騒動。長男は西村雅彦さん、そのお嫁さんが夏川結衣さん。長女に中嶋朋子さん、夫は林家正蔵さん。次男は妻夫木聡さん、恋人が蒼井優さん。音楽は久石譲さんです。

 わたし、今年見た映画のベスト1はこれに決めました。人物それぞれに人間味があり、それゆえただようペーソス感がたまらない。いちいち小ネタが効いていたり、山田洋次監督の代表作「男はつらいよ」がちゃっかり宣伝されていたり(映画館にリバイバル上映としてポスターが貼ってある、家にDVDが揃ってある等)、「男はつらいよ」のテーマ曲が歌われたりもしました。「東京物語」に重ねた場面ではしんみりしつつ、ひたすら笑いっぱなしの108分でした。館内も、笑い声やツッコミの声が絶えず、楽しさをみんなで分け合えたような思いがしました。とても愉快な気分でした。
 今年これからもいくつか映画を見るでしょうけれど、たぶんわたしはこの映画が一番好きです。

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一〇三万以下で働きたい人の多ければなごなごする職場

  三十も過ぎて職場で泣くなんて痛々しいな わたしのことです

  「田宮さんが頑張ってるのわかってるよ」次々皆に言われかなしい

  とりあえず昨日も今日も昼ごはん一緒に食べる人がいて、雪

  好きだった前の仕事の夢を見たスケープゴートになる前までの

  生きてゆく 小雪降る夜を歩きつつ生きてゆくなり傘も差さずに

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 ヘリコプターの音が聞こえる。行方不明者の、5年目の捜索だろうか。2011年3月、震災の頃も、ヘリコプターの音がずっと鳴っていたから、ヘリコプターの音は不安な気持ちを呼び起こす。

 職場で被災して、その日は職場に泊まって、翌日に自宅に帰された。一人暮らしの自宅アパートは、足の踏み場もないほど散乱していた。冷蔵庫は廊下の真ん中に出てきていた。購入の際に大の男2人がかりで配達してもらった洗濯機は倒れていた。スチールラックや本棚は元の場所とは違う場所に移動していて、すっからかんになった中身は全部床の上に散らばっていた。電話が通じなくて誰とも連絡のつかない中、独りで片づけをした。水道が止まっていてトイレも使えず、区役所や文化センターまで用を足しに行った。ひび割れた窓を、余震に備えて開けたままにしておく。隙間から、冷たい風が入り込む。雪が降っていた。携帯電話のメールを何度も打っては送信ボタンを押したけれど、電波が届かず送られなかった。

 あれから5年。やっと、わたしの震災が遠くなってきたのを感じる。過去よりも、今、目の前のことで気持ちが忙しい。去年まで抱いていた、「わたしだって被災したんだから!」という思いは、もうない。ずいぶん楽になった。努力もしたのだった。仕事の業種や働き方を変えたり、意識して外へ出たりした。新しい世界に目を向けるようにした。やっと、ここまできた、と思う。やっと、今を生きられるようになった。
 よく耳にする「あの日を忘れないで」というフレーズ。けれども、被災当事者の人は、忘れてもいいような気もする。つらい気持ちをずっと抱えていなさい、なんて、とても言えない。

 今年の3月11日は晴れているので、洗濯をした。震災直後は、いろいろなうわさがあって洗濯物を外に干すのがためらわれていたことを思い出す。まだ外で子供を遊ばせない地域もあると聞く。わたしはもうどうでもよくなり、ベランダに白いシーツを広げる。

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 介護士による虐待や殺人など痛ましい事件の影響で、この頃、良い介護施設の選び方などがよくテレビで紹介されています。
 利用者さんが笑顔でいること、散歩や買い物など外出の時間があるかどうか(外出は介護報酬?の点数にはならないので、利用者さんによろこんでもらいたい施設側のサービスで行われているのだとか)など、なるほどなあと思います。
 良い介護施設かどうか見分ける方法の一つに「食器は陶器を使っているか」というのがありました。陶器の食器を使っている所は利用者様のことを考えてる、との理由だそうです。確かに陶器の食器はきれいですし、ほどよい重さが麻痺を患う人の手にも良いようなのですが、割れないように気を遣うため仕事が遅くなり調理師泣かせなので、メラミンの食器でも許してください。
 また、わたしが介護の現場で働いたり、他の施設などもいくつか研修で訪れたりした経験から。施設の行事やレクレーションに、現場で働く介護士さんだけでなく、事務室にいる職員さん(施設長、事務員、ケアマネージャーなど)や厨房にいる調理師さん(ただ、調理師は直雇の施設もあれば、専門の業者が入っている施設もあります。)、送迎のドライバーさんなども参加している施設は良いと思いました。特に、事務室の職員は正社員で、現場の職員は非正規社員だったりすることも多いので、そのあたりに壁があると人間関係もぎすぎすしたものになり、職場の雰囲気が濁ってしまいます。施設の規模によって難しい部分もあるかもしれませんが、普段は利用者様と接しない業務の方々も、数字や書類の情報だけではなく、現場に出て利用者さん達や介護士さん達に触れ合う機会の持てている施設は、いろいろ風通しが良いように思います。
 あと、これは一箇所だけでしたが、利用者さんを「お客様」と呼ぶ施設もあって、間違いではないのでしょうけれど、商売っ気が押し出されている感じがしてわたしは気になりました。

 実家の、もうすぐ89歳になる祖母が、この3月から週一で通所介護施設に通い始めました。近所のお茶飲み友達もいなくなり、自身も体が不自由になってきて最近はずっと家にばかりいたので、施設でお話したり体操したり、楽しく過ごせればいいなあと思います。

  「はつ恋の味がするわ!」とはしゃぎつつ嫗らの食むぶどう寒天

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  十二月六日に地下鉄東西線開通するなり震災から五年

  一年後使えなくなるバスカード財布に二枚残りていたり

  十一階職場窓から海が見ゆビルとビルとの間のきらめき

  交通費出ぬゆえ休みの前日は歩いてかえる二四〇円分

  節約し歩き帰れば通り路に元恋人の家などあって

  性に合う職種と思う現職の離職率九割とニュースに知りぬ

  非正規雇用で貧乏なので歌会後に高いプランの飲み会は困る

***

 ほんとうに生活に困っていたら歌会後の飲み会には参加しませんので、オチのようなつもりで詠んだだけだったんです…。まさか採られるとは。

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  石巻焼きそば屋台の屋台の列長し仙台泉区花火大会

  十二階トイレ窓からお隣りのビルの会議が見ゆ薄曇り

  こんな仕事こんな仕事と思いつつ就業できることのうれしさ
  
  ユニクロのTシャツ二人かぶいりいる東北大学短歌会歌会

  偶然に会いたるままに駅中の立ち食いそばを並んで啜る

  豚汁と思えば美味し宮城味あれを芋煮と認めないけど

***

 今月はごちゃごちゃした感じ。そして今月号からなぜか江戸さんの選歌欄評を担当しております。評は不得意で、歌会でもとんちんかんなことばっかり言ってしまうわたしなので、うまく歌意を汲めているか心配なのですが、半年間がんばりますのでどうぞよろしくお願いします。

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HN:
おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
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