川が好き。山も好き。
一人暮らしを始めてから10年ほどはほとんど疎遠だったのが嘘みたいに、この頃は実家によく帰る。一人暮らしの一人の部屋に一人で居る時は、ついついパソコンを開いてインターネットに繋いだり文章を打ったりして過ごしがちだけれど、実家にはパソコンがない。外出先で携帯電話を使ってネットに繋ぐという習慣はない。自分のパソコンを持っていって文章の作業をすることもあるけれど、2、3日の滞在ならパソコンという荷物は重たい。
実家ではせっかくパソコンの使えない状況にあるので、パソコンから離れた時間を過ごす。あまり荷物にならない文庫本を持っていったり、実家の本を読んだり、実家で飼っている犬と遊んだり、田舎道を散歩したり、野菜を出荷しに市場へ行くのについていったり、家族のために食事を作ったり、パソコンから離れて過ごした時間の方が、なんというか、生きている、という感じがする。休職した(のちに退職した)際、療養として実家でそんなふうに過ごしたことが、今の回復に繋がっている気はする。
祖母と過ごすのも楽しい。祖母は、わたしが帰ってくることを知ると、訪問販売のヤクルトを買って待っていてくれる。そんな祖母とヤクルトを飲んだり、一緒に犬をからかったり、部屋のこまごまとした手伝いをしたり、シップを貼ってあげたり、テレビを見ながらおしゃべりをしたり。
テレビに映る俳優の窪田正孝さんを「わたし、この人が好きなの」と言ったところ、祖母は「女房の方が良い男だ」と言う。女房、女房、と何のことだと思いきや、NHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』に水木先生役で出演していらした向井理さんのことであった。丁度、ご結婚の話題が持ち切りな時期だったこともあり、テレビでよく見かける度に「優しそうだ」「良い顔だ」とうれしそうで、乙女な祖母がおもしろかった。「向井理さんっていうんだよ」と名前を教えてあげると、「いい名前だなあ」と何度もくり返すのだった。次に会った時に覚えているかわからないけれど。というか、わたしがいいなあと思っている窪田正孝さんも朝ドラ出てたのに、やっぱり祖母なりの好みがあるのね。祖母が向井さんを気に入っているということが、なんだかほんとうにおもしろかった。今まで他のテレビの人をそんなふうに言っていたこともなかったので、よっぽど好きなのでしょう。
実家に居る間、裁縫は苦手だけれど、ボタンで取り外しのできる携帯電話入れも作った。ポケットのないバッグに付けるのだ。古い服の袖部分を袋にして、古いエプロンの紐で持ち手とボタンホールを作り、古いパジャマのボタンを付けて、余りもののレースのコースターを飾りに縫い付けた。柄もちぐはぐで縫い目もがたがただけど、自分用なので別にいいの。ボタンだけは、わたしのへたくそな縫いっぷりに業を煮やしたのか、家政科出身の母がちゃちゃっと付けてくれた。
パソコンから離れた時間を、一人暮らしの自宅に居る時にも過ごしたい。そもそも、誰かと一緒に居る時にネットを繋ごうなんて思わない。パソコンをさわりたくなるのは一人ぼっちで居る時なのだ。
ネットでも繋いでなけりゃわたしなど何処にもいないみたいな夜だ
実家ではせっかくパソコンの使えない状況にあるので、パソコンから離れた時間を過ごす。あまり荷物にならない文庫本を持っていったり、実家の本を読んだり、実家で飼っている犬と遊んだり、田舎道を散歩したり、野菜を出荷しに市場へ行くのについていったり、家族のために食事を作ったり、パソコンから離れて過ごした時間の方が、なんというか、生きている、という感じがする。休職した(のちに退職した)際、療養として実家でそんなふうに過ごしたことが、今の回復に繋がっている気はする。
祖母と過ごすのも楽しい。祖母は、わたしが帰ってくることを知ると、訪問販売のヤクルトを買って待っていてくれる。そんな祖母とヤクルトを飲んだり、一緒に犬をからかったり、部屋のこまごまとした手伝いをしたり、シップを貼ってあげたり、テレビを見ながらおしゃべりをしたり。
テレビに映る俳優の窪田正孝さんを「わたし、この人が好きなの」と言ったところ、祖母は「女房の方が良い男だ」と言う。女房、女房、と何のことだと思いきや、NHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』に水木先生役で出演していらした向井理さんのことであった。丁度、ご結婚の話題が持ち切りな時期だったこともあり、テレビでよく見かける度に「優しそうだ」「良い顔だ」とうれしそうで、乙女な祖母がおもしろかった。「向井理さんっていうんだよ」と名前を教えてあげると、「いい名前だなあ」と何度もくり返すのだった。次に会った時に覚えているかわからないけれど。というか、わたしがいいなあと思っている窪田正孝さんも朝ドラ出てたのに、やっぱり祖母なりの好みがあるのね。祖母が向井さんを気に入っているということが、なんだかほんとうにおもしろかった。今まで他のテレビの人をそんなふうに言っていたこともなかったので、よっぽど好きなのでしょう。
実家に居る間、裁縫は苦手だけれど、ボタンで取り外しのできる携帯電話入れも作った。ポケットのないバッグに付けるのだ。古い服の袖部分を袋にして、古いエプロンの紐で持ち手とボタンホールを作り、古いパジャマのボタンを付けて、余りもののレースのコースターを飾りに縫い付けた。柄もちぐはぐで縫い目もがたがただけど、自分用なので別にいいの。ボタンだけは、わたしのへたくそな縫いっぷりに業を煮やしたのか、家政科出身の母がちゃちゃっと付けてくれた。
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短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)
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tomomita★sage.ocn.ne.jp
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