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川が好き。山も好き。
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直近に働いていた法人やお医者さんの勧めもあって、しばらくは福祉制度のお世話になろうと思った。が、協会に詳細を問い合わせたところ、当てにしていた手当の受給資格を満たしてないことを知った。当てにしていたのに。手当を受けながら、ゆっくり療養しつつ自分に合った仕事を探すつもりでいた。この先どうやって生きてゆけばいいのだろう。先日の失業(再就職)手当の件といい、世の中は思ってたより優しいようで、やっぱり厳しい。自業自得なのだろうか。
 思えば、わたしは賭け事が嫌いで生活には堅実な思考だけれど、人生の方は博打打まくっているような気がする。こんなふうに生きたくなんかないのに。おだやかに優しい安定した暮らしがしたいのに。人生に博打を売ったと言っても、大恋愛に溺れて身を滅ぼしたとか、起業しようとして栄華を極めたものの没落した、とかではない。若気の至りでつまらない夢を追って若さを棒に振り、安定職に就いてなんとか軌道修正できたと思ったら震災パワハラ病気とかだから、ロマンも何もない。でも、これからなんとかなれ。

 その日は映画デーだったので、好きな角田光代さんが原作の『紙の月』観に行くことにした。先々の暮らしがわからな過ぎて引きこもりがちになってしまいがちだから、先々の暮らしのことを考えず外に出て今の自分を楽しませてあげるということもしてみようと思い立った。その方が心には良さそうで。
 『紙の月』おもしろかった、小説版もドラマ版も未見で先入観なしに観たのもよかったかもしれない。そして長町モール紀伊国屋の裕子先生歌集の充実っぷり。平積みの斉藤梢さんの歌集も欲しかったけれど、ずっと読みたかった永田和宏先生河野裕子先生ご一家の『家族の歌』と角田光代さん穂村弘さんの『異性』が文庫化していたので購入してしまう。
 雑貨屋さんにも寄った。震災以降ダンボールに用意していた防災グッズを、持ち出し用にリュックに入れたいなあってずっと思っていたのだ。防災グッズ入れだからそんなちゃんとしたおしゃれバッグじゃなくてよくって、安価で丁度良いの見つけて購入したら、店員さんが「おともさんですよね!」って、大昔の職場で一緒だったバイトちゃん!
 5、6年ぶりの再会だったけれども、感じの良い笑顔は相変わらずで、実のところ、わたしは笑顔の大切さを同僚時代の彼女を見ていて覚えたのだった。ちゃんとした別の就職先の決まって退職したはずの彼女にもあれからいろいろあったみたいだけれど、わたしもいろいろあったけれど、先々のことが不安過ぎて映画なんか観てる場合じゃないかもって思いながらも、映画観に行ったからこんなふうにうれしい再会があって、よかった。今の連絡先を交換して、わたしも今でも交流のある共通の同僚仲間も交えてまた会いたいね、ゆっくりお話したいねって話をした。社交辞令に終わらず、実現したらいいなって思う。そのために、自分も動きたいと思う。人との繋がりはほんとうに大切にしてゆきたいから。

 福祉の手当は受給できないことが決まったけれど、数日して、短期ではあるものの今の自分にもがんばれそうな仕事に就くことになった。

  「またね」ってまたの日が来て ああわたし一人ぼっちじゃないんだなって

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おとも
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女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
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