川が好き。山も好き。
象好きな友人の、象グッズの買い物に同行させてもらった。このところなにか発散したいことがあり、とみに購買欲が増しているのだという。なぜか大きな道路が渋滞で混んでいたので、回り道になるという海側の地域を通って向かうことにした。
こわれかけた家と、真新しいコンビニやパチンコ店が点々と建つ、荒涼とした野っ原。田や畑の広がるのどかな光景なら生まれ育った田舎で見慣れている。けれど、それとは違う。「もしかして、ここは津波で…?」と聞くと、「そうだよ、この辺りずっと家が建ってたんだよ」と教えてもらった。
初めて訪れた場所だから、震災前のこの辺りの景色を、わたしは知らない。思えば、震災ののちに初めて知ったことがたくさんある。
震災前はほとんど帰省もせずに平気だったから、自分の家族のこともよく知らなかった。震災前はどんなに寂しくても自制ができていたから、人の声が聞きたい手を握りたいという衝動も知らなかった。自分の思考のねじれも、抑えていた感情も、心の弱さも、震災の後に思い知った。同じなにも無い状態でも、最初から無いのと、手にした後に失って無くなったのでは、全く違うということも。そして、素直な自分を大切にするだけで幸せになれるということも。
帰り、道を間違えて裏の出口から出たところ、なんと、本物の象を見た。買い物先に併設された木下大サーカスの象が、係員さんに連れられてテントから出てきたのだった。
タイやインドでは、象は幸せを運んでくれる動物だという。思いがけず生の象に遭遇したわたし達に、きっと幸せが訪れるのでしょう。
しあわせになれる準備ができてきてあとは些細なきっかけ一つ
こわれかけた家と、真新しいコンビニやパチンコ店が点々と建つ、荒涼とした野っ原。田や畑の広がるのどかな光景なら生まれ育った田舎で見慣れている。けれど、それとは違う。「もしかして、ここは津波で…?」と聞くと、「そうだよ、この辺りずっと家が建ってたんだよ」と教えてもらった。
初めて訪れた場所だから、震災前のこの辺りの景色を、わたしは知らない。思えば、震災ののちに初めて知ったことがたくさんある。
震災前はほとんど帰省もせずに平気だったから、自分の家族のこともよく知らなかった。震災前はどんなに寂しくても自制ができていたから、人の声が聞きたい手を握りたいという衝動も知らなかった。自分の思考のねじれも、抑えていた感情も、心の弱さも、震災の後に思い知った。同じなにも無い状態でも、最初から無いのと、手にした後に失って無くなったのでは、全く違うということも。そして、素直な自分を大切にするだけで幸せになれるということも。
帰り、道を間違えて裏の出口から出たところ、なんと、本物の象を見た。買い物先に併設された木下大サーカスの象が、係員さんに連れられてテントから出てきたのだった。
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おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)
連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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