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川が好き。山も好き。
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『おかえり横道世之介』(吉田修一)を読みました。元々『続 横道世之介』として刊行されたものが、文庫化にあたり解題されたとのこと。前作がとても好きだったのに、どうにも読書はマイペースなもので続編が出ていることをずっと知らなくて、短歌総合誌を購入しようと思って赴いた書店で、なんとなく文庫本の棚までまわっていた時に見つけました。こういう出会いがあるから、本屋さんは楽しい。それでうっかりするとあれもこれも読みたくなって予定外の衝動買いをしてしまうのです。

 前作『横道世之介』から5年後、大学を卒業して24歳になった世之介は、バブル最後の売り手市場に乗り遅れ、就職に失敗してバイトとパチンコで食いつないでおりました。両親と従兄、地元の同級生ぐらいは本作にもちらっと顔を見せるも、大学生時代を共に過ごした友達や恋人は出てこないどころか、思い出す素振りもありません。前作からの読者としては読んでいて少し寂しい。けれども、巻末の対談での沖田修一監督の“世之介については、僕は以前「疎遠になった人たちの代表だ」って言ったんですよね。中学校、高校、大学とか、人生に区切りがついていくうえで、理由もなく疎遠になった人たちが誰にでもいます。今は会わなくなったけれど、その人たちとの出会いがあって自分が形成されていることは間違いない。”という言葉で解かってきました。世之介が以前の人間関係を疎遠にしているように、世之介も疎遠にされていて、ふとしたきっかけで懐かしく思い出されて、それは普通のことで、そんなふうにしてみんな生きているんだなあっていう。付き合う人たちが変わっても世之介は世之介で、うれしく、せつなく読み進めました。

 この本が出たのは数年前だけれど、自分の環境が変わったこの年に読めたのがよかったな、と思いました。あの日なんとなく書店内をうろうろしなければ、こんな絶妙なタイミングで読めなかったんだと思うと、なにか不思議な導きを感じます。さらに続編も出ているようなので、自分なりの好機を見つけていつか読みたいと思います。

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おとも
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歌集『にず』(2020年/現代短歌社/本体¥2000)

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