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川が好き。山も好き。
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仕事の帰り、灯りの少ない夜の道を歩いていたら、背後からハアハアと息遣いが聴こえ、それは次第に大きくなってゆきました。後ろに人がいる、というだけで不安な気持ちが湧き、背中が強張ります。このあたりの道では数年前に通り魔事件が起き、まだ犯人が捕まっていないのです。あの犯人がまだ潜んでいるかもしれない……とは思いませんが、毎日のようになにかと物騒なニュースはあり、どうしたって夜道は怖い。わたしは若い女性じゃないしお金持ちでもないから大丈夫、と思いたいけれども、「誰でもよかった」と言う動機はよく聞くし、夜の闇の中では若くないこともボロを着ていることもよくわからないでしょう。
 早足で逃げようか、つけられているんじゃないか、しばらくの逡巡ののちに思いきって振り返った瞬間、ジョギング中の男性がわたしを追い越してゆきました。まっすぐに前を向いて走って、危険な人でもなんでもありませんでした。ああ、よかった。恐怖から解き放たれて安堵しつつ、何の罪もない人を疑ったり怖がったりして、自分の被害者意識の大きさを申し訳なくなります。

 「セールスなら結構です!」と、仕事でかけた電話を冒頭から敵意丸出しでガチャ切りされることがあります。社名を名乗り、用件を伝えてセールスではないことを説明しても、嘘なんじゃないか、と信じてもらえず刺々しい言葉を投げつけられることも少なくありません。そのような対応になってしまうほどに、しつこい営業の電話や誰かのなりすましのような電話がかかってきているのでしょうか。あなたもそうなんでしょう、と疑う心情は理解できるし、しょうがないことなのかなあと割り切るしかありません。わたしにも副業でマンションを買わないかとか、20万払って短歌を新聞に載せないかとかいう不要な電話がかかってきます。あやしまれてしまうのは仕方ない。変な電話と一緒にしないで、なんて憤る気にもなれず、そういうものだ、と慣れてしまっています。

 先日、塔短歌会のオンライン新年会に参加しました。懇親会のような場で、詠草の送付の際に速達は控えていただければありがたい、という話になりました。速達だと郵便受けへの配達ではなく、郵便屋さんが玄関の呼び鈴を鳴らして手渡しになることがあり、受け取りの手間が増えたりするのです。そもそも事前連絡なしの訪問なんて不要な訪問営業や宗教の勧誘がほとんどだし、強盗事件も怖いし、実家や通販など宅配便などの心当たりがない時は呼び鈴が鳴っても用心して留守のふりをすることが多くなりました。ほんとうに大事な用なら不在票が入るので、再配達をお願いできます。不在票ではなくて地球の滅亡や救世主の冊子が入っていた時は、やっぱり出なくて良かったと安堵するのでした。

 警戒したり、されたり、いつのまにかそうしたことが常になってしまって。人を疑うより、信じて生きてゆければいいのだけど。

  刑務所の方へ沈んでゆく夕陽とても大きなとても真赤な

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プロフィール
HN:
おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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