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川が好き。山も好き。
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街中のケヤキの木に電飾が巻き付けられ、イルミネーションの準備が始まっています。わたしも季節に追いつかなければ。

 9月10日は河野裕子記念シンポジウムへ。塔に所属しているので河野裕子さんは必修科目のように思っていて、もちろんわたしも全てではないけれど様々に読んできて、その良さを味わいつつ、正直なところどこか遠いような、何か膜に隔てられているような感覚もありました。なぜなのか、ずっと考えていました。
 たとえば『河野裕子読本』(角川学芸出版)の赤い帯には「普通の日々は、有難い。妻として、母として、女として――。」と書いてあります。なるほど、わたしは妻でも母でもないし、女であることもうまく肯定できず育ってきているので、いまいち共感できなかったのか。と、当初は考えてみましたが、そんな単純な話では決してないでしょう。境遇が違うから歌が届かないなどということはあり得ず、職業や年齢、性別、生きていた時代が違っていても好きな歌はたくさんあるのです。
 妻や母、女としての立場に限らず河野裕子さんの歌や文章、逸話などからは愛情深い人柄が伝わってきて、心根の屈折しているわたしにはその愛情深さが少し息ぐるしい、のかもしれない。と、この頃は思い始めました。自分の心を測るように、河野裕子さんの歌などに向き合ってみたい。
 そんな思いもあってシンポジウムに赴いたのですが、講演や鼎談などとても充実していて、はるばる京都まで来てよかったと思いました。たくさんの方々がそうであるように、わたしも実際にお会いすることがあったなら、その人柄に魅了されていたのかもしれないなあと思いました。

 9月11日は全員歌会、選者の方の評付きのの詠草一覧を参照しつつ別の選者の方々がステージ上で評をさくさくハイペースで200首ほど。的確な評にうなづきながらも、わーっと聞いてしまった感はあるのですが、机を並べて皆が発言を求められる歌会に比べ喋る人が限られている分、マイクを回したりの接触や飛沫対策の面では良かったのかもしれません。大変な中を様々な工夫をして開催していただいて、たくさんの方ともお会いできてよかったです。ほとんど「こんにちは」しかお話できていないような、またご挨拶しそびれた方もたくさんいたと思うのですが、ぜひ次の機会に。

 帰りの新幹線のホームには修学旅行生がうじゃうじゃいました。専用の車両を写真に撮っている撮り鉄もいました。わたしも新幹線での京都行きは高校生の時の修学旅行以来なので、凡そ半世紀ぶりです。
 行きは平日だったこともありゆとりがあったのですが、帰りの新幹線は満員でした。お腹がすいてもこの人混みの中で口を開くのは躊躇われ、持参したアルコール消毒を指に塗り込めつつ飴を舐めてやり過ごすぐらいが精いっぱいです。窓際の席で歌集などを読みながら、ふと窓の外が明るくなる瞬間があり、そのたび顔を上げると、そのたびに川がありました、矢作川、天竜川、大井川、安倍川、橋を見て名前を確認できたのはこれだけですが、他にもいくつかの川を見ました。はるかに遠いと思っていた京都へ、4時間程度で行けたことが自分の中で新鮮な驚きでした。自宅に帰宅して「鎌倉殿の13人」に間に合ったのがとてもとてもうれしかったです。

 会場は駅の出口に直結だったので、わたしはいちいち駅に行って地下に降りて地下から出て両日を通ったのですが、後々よく地図を見れば、わたしの宿泊先は会場のすぐそばでした。土地勘がないからと、わざわざ反対方向の駅に行ったり地下に降りたりぐるぐるして、そんなふうにわたしはきっと人生も回り道をしているんだろうなあと思いました。

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おとも
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女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
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