川が好き。山も好き。
塔5月号がまだ届く前に4月号を読みましょう。10~3月号も、まとめていないだけで読み終えてはいるので、追々追記していきたい、という気持ちで。敬称略です。
塔新人賞・塔短歌会賞からも一首づつ。受賞者の皆さま、おめでとうございます。
3.12はさいふの日だと書かれおり海に沈みしあまたの財布 吉川宏志
何より、財布に着地するのがすごい歌だと思いました。もちろん海に沈んでいるのは財布だけではないのだけれど、このズラし方にも鎮魂の思いが伝わります。
入院し夫の居らねば鏡餅小さくてたびたび橙落つる 亀山たま江
おもしろくも寂しい歌。鏡餅が小さいだけで十分おもしろいのだけど、結句がとても好き。ここまで詠めるようになりたいとつくづく思いました。
窓のなきデパート地下の売り場にも割引札の夕暮れは来ぬ 森純一
地下に居て、外の景色を思うことがあまりないことに気づかされました。割引札を見て夕暮れの時間を思う、というのがいいです。
野ねずみを殺しし猫のひつたりと吾に身を寄せ夜を眠りぬ 青木朋子
どきっとする入り。残虐な行為の後の身の寄せ合いに危うさを感じ、いろんな表情があるのは猫だけではないのかもしれないと思わされます。
孫七人在るが生きゆく道となり今年も米を作らむとする 福島美智子
健康さに惹かれました、人生の健康さです。自分が3人生んで、それぞれが2~3人生んで孫7人。「米」なのも良くて、力強さに泣きそうになります。
星型の穴を通つて来たことも忘れて溶けてゐるマヨネーズ 千葉優作
実景なのでしょうけれど、観念のようにも読めて考えさせられます。最近のマヨネーズは細穴のキャップが付いていることもあり、星型にノスタルジーを感じたりもしました。
石地蔵の赤き前掛新しく取り替へられて明日は元旦 石川啓
色の薄い冬景色に前掛けの赤が際立ちます。新しい年を迎えるにあたり、人知れず前掛けを取り替えた人がいるということ、その心に思いを馳せたくなるのでした。
いとし子を包むごとくに水道栓凍てつく明日耐へよと囲ふ 壱岐由美子
雪国では大げさでなく実感のこもる比喩なのだと思いました。やわらかであたたかな赤ん坊と、凍てつく水、氷の対比もおもしろいです。
エナメルの靴を履かせてくれた日は母が誰かに頭を下げる日 森山緋紗
塔新人賞受賞作「海を縫う」から。「エナメルの靴」がとても効いていて、どきどきする歌。連作でいろいろわかってくるけれども、この一首だけでも背後の物語を感じさせます。
昇るがに雨はふりしく 破綻した湖のホテルのみどりの屋根を 澤畑節子
塔短歌会賞受賞作「水の霊香」から。天候という大きなところから徐々に屋根にフォーカスしてゆく構成が光ります。連作の一首目で舞台設定の提示がされて、この後の展開に興味をそそられました。
塔新人賞・塔短歌会賞からも一首づつ。受賞者の皆さま、おめでとうございます。
3.12はさいふの日だと書かれおり海に沈みしあまたの財布 吉川宏志
何より、財布に着地するのがすごい歌だと思いました。もちろん海に沈んでいるのは財布だけではないのだけれど、このズラし方にも鎮魂の思いが伝わります。
入院し夫の居らねば鏡餅小さくてたびたび橙落つる 亀山たま江
おもしろくも寂しい歌。鏡餅が小さいだけで十分おもしろいのだけど、結句がとても好き。ここまで詠めるようになりたいとつくづく思いました。
窓のなきデパート地下の売り場にも割引札の夕暮れは来ぬ 森純一
地下に居て、外の景色を思うことがあまりないことに気づかされました。割引札を見て夕暮れの時間を思う、というのがいいです。
野ねずみを殺しし猫のひつたりと吾に身を寄せ夜を眠りぬ 青木朋子
どきっとする入り。残虐な行為の後の身の寄せ合いに危うさを感じ、いろんな表情があるのは猫だけではないのかもしれないと思わされます。
孫七人在るが生きゆく道となり今年も米を作らむとする 福島美智子
健康さに惹かれました、人生の健康さです。自分が3人生んで、それぞれが2~3人生んで孫7人。「米」なのも良くて、力強さに泣きそうになります。
星型の穴を通つて来たことも忘れて溶けてゐるマヨネーズ 千葉優作
実景なのでしょうけれど、観念のようにも読めて考えさせられます。最近のマヨネーズは細穴のキャップが付いていることもあり、星型にノスタルジーを感じたりもしました。
石地蔵の赤き前掛新しく取り替へられて明日は元旦 石川啓
色の薄い冬景色に前掛けの赤が際立ちます。新しい年を迎えるにあたり、人知れず前掛けを取り替えた人がいるということ、その心に思いを馳せたくなるのでした。
いとし子を包むごとくに水道栓凍てつく明日耐へよと囲ふ 壱岐由美子
雪国では大げさでなく実感のこもる比喩なのだと思いました。やわらかであたたかな赤ん坊と、凍てつく水、氷の対比もおもしろいです。
エナメルの靴を履かせてくれた日は母が誰かに頭を下げる日 森山緋紗
塔新人賞受賞作「海を縫う」から。「エナメルの靴」がとても効いていて、どきどきする歌。連作でいろいろわかってくるけれども、この一首だけでも背後の物語を感じさせます。
昇るがに雨はふりしく 破綻した湖のホテルのみどりの屋根を 澤畑節子
塔短歌会賞受賞作「水の霊香」から。天候という大きなところから徐々に屋根にフォーカスしてゆく構成が光ります。連作の一首目で舞台設定の提示がされて、この後の展開に興味をそそられました。
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短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)
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