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川が好き。山も好き。
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もう12月、塔11月号まで読み終えております。次号が、せめて次々号が出るまでには書き留めておきたいものですが、こういうのは1回ペース崩れるとずるずる行くなあ。
 10月から若葉集の受付をしております。宛先が都市部から北の方に移ったことにより、南にお住まいの皆さまにおかれましては〆切が実質早くなってしまって申し訳ないです。
 9月号から遡ってみましょう、敬称略です。

  永遠のごとくにわれの子を膝にのせてるおとうと 生前のこと  岩野伸子

 子が膝に乗る大きさであるのは限定的な時間であると思えば、「永遠のごとく」「生前」といった言葉にドラマを感じずにはいられないのです。
 
  席ひとつ空けて映画を観る五月ふたりに透明な子のあるごとく  大森静佳

 映画館のコロナ感染予防対策がこんなせつない歌になるのだなあ。4句目の字余りに透明さが強調されるようです。

  作ったはいいがどこかが恥ずかしいやい歌集め恥ずかしいぞ  小山美保子 

 下の句の呼びかけが楽しい。歌が歌集として形になったことで、自分から離れたような感覚が伝わってきます。そして『灯台守になりたかったよ』すてきな歌集ですよ!

  箱庭の駅を灯して永遠に来ない電車を待つ人を置く  佐藤涼子

 「永遠に来ない電車」とわざわざ言葉で表現されると、なんてことのない箱庭が急に意味を持って見えてきます。箱庭に置く「人」が自身の投影であるかのような。

  この家に何年住んでゐるのかと三回も聞き友 夕方帰る  山田トシ子

 淡々と詠まれていますが「三回も」の「も」に作者の感情がにじみ出るようです。後半の「聞き友」といった不思議な言い回しや一字空けのひっかかりも同様に。

  コンビニの前に咲いてたねじ花を見つけたことを今日は話そう  吉原真

 ねじ花が咲いてたのも見つけたのも過去形なので、今咲いてると伝えたいわけではないのだなあと思うとなんとも不思議な歌。ささやかな記憶に、作者だけの特別な思いがあるのでしょう。

  我が家には夕焼け見える窓三つそのうち二つを行ったり来たりす  朝日みさ

 三つのうち二つだけを、という具体性がリアルでいいなと思いました。なぜなのか明かしていないのですが、理由がわかるとかえって野暮になる歌でしょう。

  かなしみをだれにでも言ふひととゐて手持ち花火の火を分け合へり  千葉優作

 特別に心をゆるした相手だからというわけでなく、誰でもいいから気持ちを吐き出したい、という人。受け止める側の心情が花火に託されていて、その火がかなしく優しく点っているようです。

  沢山の馬に囲まれうれしさのあまり詠草浮かばずにいる  芳賀直子

 吟行でしょうか。どういう状況?って想像すると楽しい光景です。「うれしさのあまり」という短歌らしくない表現もなにかおもしろくて。やっぱりうれしい時ではなくつらい時かなしい時に歌は詠ってしまうものなのだ、ということにも気付かされます。

  田の畦にひとり小草を引く男、力ある尻クッとつき出し  飯島由利子 

 こういう健康的な農の歌は惹かれる題材なのですが、「クッ」というオノマトペに勢いがあって、「ク」の字が尻をつき出している人に見えてきておもしろいです。

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おとも
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女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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