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川が好き。山も好き。
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新型コロナウイルスのためにしばらく再放送だった朝ドラ「エール」の、本放送が再開しました。ここ数日は遅番なのをいいことに寝ぼけているので話半分ですが、主人公の裕一の家に、弟子になりたいという人が通い詰めていました。断られても断られてもめげずに「弟子にしてください!」と掛け合い続けるのを、おそろしく思いながら二度寝しました。

 相手が困っているのに自分の気持ちを押し通そうとするなんて、無理。わたしには絶対にできない。そもそも、人に頼みごとをすることすらわたしは不得意で、迷惑をかけないだろうか、嫌がられないだろうか、お礼に何をしたらいいか、いちいち気にして心労を伴うのです。自分の頼みごとによって相手の時間を奪ってしまうのも申し訳なく、自分でやってしまうというのもめずらしくありません。気兼ねなく頼めるのは「そこのしょうゆ取って」ぐらいではないかという気がしています。自分が何か頼まれる分には、「了解でーす☆」ぐらいのノリで引き受けることがほとんどなのに、なんだって逆となるとこんなにくるしいのでしょうか。
 人を信用していない――というより、自分のような者の依頼が快く受け止めてもらえるという状況を想像できない、自分に対しての不信なのかもしれないなあと思ったりするのでした。今の仕事は誰にも何も指示をしなくてもいい下っ端の立場であるということに救われていますが、「今日の歌会記書いてもらっていいですか」とか役割的に頼みごとをする機会は日々訪れます。
 
 根負けして、裕一は弟子入り志願の人を住み込みで受け入れていました。わたしみたいにあれこれ気にしてぐだぐだするより、誰にどう思われようが自分の気持ちで突き進むことのできる人の方が人生も拓けてゆくのでしょう。その真っすぐな人柄も愛されてゆくのでしょう。志村けんだっていかりや長介の家に通い詰めたといいます。ドラマの中だけでなく、実話でもよく聞く話です。
 わたしにはそんなに何かを強く願うことがあっただろうか、とぼんやりしながら、「エール」の背景にちらちら映るこけしが気になっているのでした。

  さわっても抱いても濃厚接触にならぬこけしの微笑むばかり

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おとも
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女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
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