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川が好き。山も好き。
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職場のドレスコードが厳しくないことをよいことに、普段はスニーカーなど歩きやすい靴を履いていますが、仕事の面談があったので、ビジネス仕様のパンプスを久しぶりに履きました。
 自宅から駅まで徒歩15分、駅に着く前に靴擦れが発症しました。右足のかかとの上の方、小指の外側、親指の下。炎症を起こす場所なんてだいたい決まっているのに、油断していました。歩く度、擦れて痛く、水ぶくれが広がってゆきます。まだ自宅を出てたった数分なのに、地下鉄を降りてからも15分歩かなきゃいけないのに。
 よたよたと歩き、一息吐けたところで絆創膏を貼りました。少し楽になりました。でも、靴を履く前に貼っておけばもっとよかったのです。とはいっても、確かに靴擦れを起こしやすい靴とはいえ、大丈夫な時もあるし、その時は大丈夫でも後になって不調が出てくるときもあるのだから、人の体は不思議です。

 わたしは自分の私生活の鬱憤を晴らすために鍋を作業台にバンバン叩きつけている、と、昔の仕事の上司に怒られたことがありました。わたしは鍋を叩きつけたりなんてしていないし、私生活の鬱憤晴らしというのも思い当たるふしがないので、していませんと言ったのですが、信じてもらえませんでした。「見たんですか?」と聞きましたが、「見なくてもわかる」と怒鳴られました。そのような、意味のわからないことで呼び出されては怒られていた日々がありました。
 週3回働くパートさんが、何か上司に吹き込んでいたのでした。どうして上司がパートさんの言うことのみ妄信するのかもよくわかりませんでしたが、自分にはそのパートさんのように信用してもらえる魅力がないのだと思いました。
 わたしはパートさんに指示をする立場にありましたが、腰の低い丁寧な言い方を心がけていたし、何かミスがあって注意をする時でも声を荒げたりしたことはなく、できるだけ自分の失敗談も交えながら理由を説明するようにしていました。その前の職場では、優しいと言われたこともありました。けれども、自分が思っているような自分ではなかったのでしょう。わたしの態度にパートさんは傷ついて、何度も上司に訴えていました。

「何か困っていることはないですか?」と聞かれて、「特にないです。最近、机がソーシャルディスタンス仕様になったのが快適です」と答えて、思いのほか早くにこやかに面談は終わりました。実際、今の仕事で特に困ったことはないのです。
 面談をした中には30分も1時間も不満を訴えた人もいたようです。同じ場所にいて同じ人と関わっていても、感じ方や見えているものが違うのかもしれません。
 人によって受け取り方が違っていても、自分も含め当人にとってはそれが事実なのでしょうし、人の心はそれぞれですから、どれが正解というものでもないでしょう。今の職種でクレーム対応をすることもあって、傷ついた、傷ついたと申し立てる人の強さを、この頃は思います。

  パンプスを履く前に貼るばんそうこう傷つく前に貼るばんそうこう 『にず』

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プロフィール
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おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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