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川が好き。山も好き。
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朝起きたら、昨夜の大雨が嘘みたいに晴れていました。台風はすっかり過ぎたみたいです。わたしは幸い自分の体がずぶ濡れになったぐらいで済みました。とはいえ、各地の被害状況などをニュースで見ると胸が痛みます。

 昨日は仕事でした。前日には「無理をして出勤しないように」という連絡がありました。実際に、交通事情で休みの人や、運休時間前に早退して帰宅する人もいましたが、わたしは特に影響なさそうなので予定通りに出勤です。朝はそんなに雨も降っていなかったので、少し甘く見ていたのもあります。仕事中に、翌日の歌会の中止のメールが来ました。残念だけどしょうがない。
 ほぼ定時で仕事をあがり、雨の中を10分ほど歩いて駅に着くと、バス停は閑散としていました。街中だというのに、デパートもドラッグストアも早々と閉店しています。いつもより薄暗い街に、バスの灯りが煌々としていました。

「ただいまー。雨すごいよー。わたしともう一人と運転手さんしかバスに乗ってなかったよ、こんなの初めて。街も暗くて、みんな休んでるのに、こういう時って運転手さんは大変だよね。レインシューズ履いてったけど、道路も水浸しでもうだめ、靴下もびちゃびちゃ。傘も全然役にたたなくて、早く着替えなきゃ風邪引いちゃう。あ、ベランダの桃の鉢も部屋に入れててくれてありがとう。え、お風呂沸かしてくれてるの? ご飯もできてるの? やったー!」
 、とかなんとか帰った時にこの状況を分け合える相手がいたらいいのになあと思うけれども、一人暮らしなので昨日作っておいた親子丼とわさび菜とツナのサラダを冷蔵庫から出して食べました。するうち実家の母から「停電になった、あ、点いた」と電話が来たので、こっちもこれから停電するかもと思い、備えの確認をしました。懐中電灯も、LEDのランタンも、ろうそくも、カセットコンロも、非常用トイレも、なんだかんだで揃っています。震災の時に揃えてリュックに詰めていたのでした。

 雨風の音はどんどん強くなってゆきました。サイレンは聞こえるし、携帯電話に不安を煽るような音で市からの避難指示や避難勧告が何度も届きます。テレビの台風情報で各地の被害状況を見るにつけ、あの人は大丈夫かな、この人は大丈夫かな、と心配になりました。
 けれども、心配だからといって連絡をして向こうの携帯電話の電池を消耗させてしまったら申し訳ないという配慮が先立ちます。停電して充電ができないような状態だったらわたしとのやりとりよりもっと大切な人にその貴重なエネルギーを使うべきだし、わたし以外の人からたくさんの心配の連絡が来ていて連絡に追われて大変かもしれない、家族など大切な人と身を寄せ合っているところに水を差すかもしれない、などと思いめぐらせ、結局は今は遠くから祈るのみにとどめました。
 言葉で伝えてはいないからといってなにも思っていないわけではなくて、案じています。みなさん無事でありますように。

  言葉ほどあてにならないものはなくそれでも言えばよかった言葉

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おとも
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女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
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