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川が好き。山も好き。
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次の号が届く前に読み終わりたいと思う今日この頃です。敬称略です。

  二の段を暗誦する声近づきて二八十六で擦れちがいたり  林田幸子

 そのままの歌なのだと思うのですが、こういう、何気ない瞬間に立ち止まれる感性に憧れるのでした。すごく好きな感じの歌です。

  もう絵など画きはしないのにターナーの水彩絵具を送りくる娘よ  近藤桂子
 絵具を送るというのがすてき。また絵を描いてほしいという気持ちがあるのでしょう。水彩の透明感や、メーカーのこだわりにも人柄が感じられるようです。

  腹話術するから見てという子ども真顔でこんにちは繰りかえす  宇梶晶子

 確かに、人形ではなく腹話術するお子さんを見ればこんな感じ。お子さんもまさか自分の方を見られているとは思っていないんじゃないでしょうか。おもしろい歌なのですが、どこか切なさも感じられます。

  真昼間のカーラジオより流れ出す主婦Aさんの夫への愚痴  竹井佐知子

 込み入った愚痴などは親しい友人に吐き出すのより、匿名で他人に話す方が楽だというのはわかりますが、それが真昼間にコンテンツとして一般に消費されるという奇妙さ。確かに「テレフォン人生相談」などは妙におもしろいのだけど。

  川の字に赤子はさみて眠りしと仲直りしたらし娘からの電話  白波瀬弘子

 夫婦げんかや寝室事情はごくプライベートなことだと思うのですが、電話で報告があるという母子間の距離感の近さに衝撃を受けました。歌となってこうして他人に広がってゆくことにも。仲の良いご家族で何よりです。

  年賀状出しに来たる子四人ゐてポストより背の高き子一人  森尾みづな

 年賀状が少ないという歌が多かった中で、年賀状文化が子供たちに息づいているのがほほ笑ましいです。ポストとの比較で子供達の年代がわかるのも上手いと思いました。

  人生が変はりそうだよあたらしきメガネに夫のほれぼれと言ふ  森永絹子

 メガネが変わっただけでこの賞賛ぶり。よっぽどすごいメガネなのか。というより、旦那様のキャラクター性。朗らかで楽しい歌です。

  搗き立ての餅ちぎるのが上手かった大祖母さんがまた話にのぼる  井木範子

 お正月など親類で餅を食べる機会の度に大祖母さんのエピソードが話にのぼり、これからも伝説のように語り継がれてゆくのでしょうか。それはとてもすてきなことのように思います。餅、というささやかさもすごく良くて。

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おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
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