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川が好き。山も好き。
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ひと月を原因不明のまま咳込んでいるうちに3月も終わりですが、今日は2月に逆戻りしたみたいな雪降りですので、2月号を読みましょう。敬称略です。

  老女みな老いし少女であることのなんと愉快な秋の薔薇園  村田弘子

 楽しげな光景の目に浮かぶ歌。いいなあ。老女達を少女のようにうれしくさせるのが薔薇の花であることも、作者のまなざしの優しさもいいなと思うのでした。

  気の強き娘がその子を叱るとき優しくて我をかなしくさせたり  三浦こうこ

 わたしも我が子には母に見せたことない優しい顔をするだろう、と気づき、どきっとしました。わたしは気が強くないし、我が子もいないのだけど。「かなしい」という率直な言葉もかなしい。母子の関係性、距離感をあらためて考えさせられます。

  いつも何か小さな手土産渡すことを楽しみとしてわが暮らし在る  新田由美子

 暮しの中で、与えることを楽しみとする心がいいなと思うのです。小さな手土産ほどの小さな心遣い。用意する時に渡す相手のことを思うのもすてきなことでしょう。 

  シチリアの飾りパンまつりにいつか行くそれだけ決めて今日ははたらく  山名聡美

 とりあえず今日の労働を乗り切るために、楽しみを一つ決めておくということでしょう。「シチリアの飾りパンまつり」という具体の、「いつか」と言いつつ現実的に叶いそうな絶妙な距離感。

  入院用のパジャマに五個の花釦花の名知らねどうすきピンクの  江原幹子

 花の形の釦、名前がわかるほど精巧な作りの釦は確かにないような気がします。けれども、優しい色合いの小さな花は入院生活を少しでも華やかな気分にさせてくれたのでしょう。お大事にされますように。

  十年を元気に暮らす自信なくポチ亡きあとの犬を飼ひ得ず  北島邦夫

 動物に愛情があればこそ、自分の思いだけで無責任に飼うわけにもいかないのですね。己を律する作者の心を切なく思うのでした。「ポチ」という定番の名前がなんだかとても良いです。元気に暮らせますように。

  焦げた鍋をこすっているその間君のことを忘れられてました  潮見克子

  鍋の焦げ付きという生活感。意外と力仕事ですし、確かに他のことが頭から消えてしまうくらいに夢中になります。けれども、鍋から手が離れた途端にまた思い出してしまうのでしょうか。作業を終えて力が抜けたような破調です。
 
 古賀泰子さんの追悼特集がとても良かったです。地下鉄の中で読みながら泣きそうになりました。

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おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
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