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川が好き。山も好き。
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欠勤も遅刻も早退もしていないのに、先月分のお給金が先々月分より8万円ほど下がっていて絶望しかありません。

 昨日は仕事終わりにドキュメンタリー映画『港町』を観てきました。公開初日で、想田和弘監督の舞台挨拶付き上映です。あいにくの雨でしたが、たくさんの方が観に来られていたようでした。
 ナレーションもテロップも音楽もなく、ただひたすら牛窓という小さな港町の目の前の現実が淡々と映し出されるドキュメンタリーです。おしゃべりなおばあちゃん・クミさんがしゃべっていて、飄々とした老漁師のワイちゃんが魚を取ります。ワイちゃんが魚市場へ行き、魚は魚屋さんが競り落とし、魚屋のおばさんはマニュアルのトラックで配達します。魚を買うお客さん達、魚を与えられる猫達、通りがかるお墓参りのおばさん。大きな事件が起こったりはしません。けれども、流れるように出会うそれぞれの人達に、それぞれの人生があります。そうした、台本のない生の言葉や振る舞いからにじみ出るものに、ああ人間ってかなしいな(「愛しい」と書いて「かなしい」と読みたい感じ)、と思うのでした。とりわけ、クミさんの妙な意地悪さ、悪気のない押しの強さは、クミさんの長い独白とは別にして、なにか寂しく、なによりどうしようもなく人間くさいのでした。

 上映終了後は想田監督のトークや観客の質問の時間が設けられました。ざっくり覚えていることを箇条書きで。
・当初は色が重要な映画だと思っていて、特に夕暮れの色が重要だと思っていて、タイトルも『港町暮色』だった。何かが足りず、奥様の提案でカラーからモノクロに、タイトルも『港町』になった。
・牛窓を撮ったのは、ご縁。元々は奥様の親類にゆかりがあって訪れていて、そこで前作の映画を撮っていたところ、漁師のワイちゃんと出会った。ワイちゃんを撮っているうちにクミさんが映り込んできて最初は困っていたが、いつのまにか主役のようになり、ついにはポスターにまで。
・これまでの映画は、どこを入れるかカットするか最終的な決定まで編集で何パターンもあったが、『港町』は割とすんなりいった。
・テーマを決めて撮ることはない。たとえばこの映画なら漁業の衰退や一期一会などをテーマにすることができるかもしれないが、テーマを先に決めると撮るものが違ってきたり編集でそぎ落とされてしまう。とりあえず自分のおもしろいと思ったものを撮っていく。テーマは後から浮かび上がってくるもの。もし漁業の衰退というテーマが先にあったとしたら、クミさんや猫は出てこない。
・クミさんが語っていた過去について、自分はジャーナリストではないので追及はしていない。ジャーナリズムとドキュメンタリーは違う。
・人が魚を食べる場面にはなぜか巡り合えなかった。
・ワイちゃんは90代の今もご健在で漁師業も現役。

 細かい文脈は違うかもしれませんが、こんな感じでした。とても興味深かったです。
 特にテーマについては、短歌の連作の作り方に通じると思いました。自分の目で見たことや感じたことを詠んでいるうちに、歌の順番や取捨を推敲しているうちに、連作全体のテーマが浮かび上がってくるものです。もちろん先にテーマがあって歌を作ってゆく人もいるし、創作で独特の世界観を詠む人もいる中で、わたしが短歌に求めているものはドキュメンタリー性なんだな、とあらためて気づきました。



  公式サイト→http://minatomachi-film.com/

 最近あんまり感想を書いていませんが、映画はいくつか観に行っていました。そのうちいろいろまとめたいです。

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自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

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