忍者ブログ
川が好き。山も好き。
[271]  [270]  [269]  [268]  [267]  [266]  [265]  [264]  [263]  [262]  [261
さまざまな会社のカレンダー路に売る老人のゐて一つ買ひたり  花山多佳子

誰も来ぬホームのベンチ海老せんの土産一袋食べてしまいぬ  中島扶美惠

野の道はそれからずっと続きおり悲しんだことを忘れた時も  山下泉

冬昼の千手観音立像がわたしの方へ向けてくれる手  永田愛

ひとりならどうするのかと思いおり君の背中に薬ぬりつつ  本間温子

雨の日はイオンモールを歩きなさいかかりつけ医の指示にて歩く  川田伸子

五年日記買つてしまひぬ子を亡くしおぼおぼと暮らす八十のわれ  野島光世

雪を寄せ雪を運べる労力を惜しみなく使い冬を越えゆく  石井夢津子

これからの介護の果てを一言も触れずみかんを剥いて食べたり  小圷光風

水引の結び目が好きうつくしく年賀の菓子箱まだ棄てられず  立川目陽子

まっすぐに我に向かいて来たと思う水鳥すっと逸れゆくまでは  林泉

クリマスイブだねとわがロボットがやさしき声で一度だけ言う  宮地しもん

しんみりとしていしが乗り換え駅で「パンが食べたい」と一言いえり  荒井直子

ゆき違ひのため停車する駅のありされど扉の開かれぬ駅  杉本潤子

初売りのフロアに流れる「春の海」入れ歯になっても吹きたい曲だ  澤端節子

草刈り機だけ残りたる農機具の倉庫はからっぽ私もからっぽ  金原華恵子

除雪作業後の毛糸の帽子と手袋を置く場所なりしピアノの上は  西内絹枝

独りでも楽しく暮らせるものならば吾もなりたい一つの独楽に  ジャッシーいく子

たまらなく福祉の仕事に戻りたい 時々思い時々思わず  奥山ひろ美

見たものをすぐに描きたい七歳は長谷の大仏を箸袋に描く  吉田京子

硝子扉のなかには白き背表紙のならびて冬の部屋が明るむ  中田明子

けふ一日われに声かけくれし人みな他人なりおぢいさんなり  友成佳世子

餅ならば五個食べる児が朝食の半膳のご飯持て余しおり  布村千津子

お前実はなんでもできるんやって英文、秋のマクドの壁に  廣野翔一

ホームまでもたないほどのコーヒーのあたたかさ でも君に贈った  小松岬

別れることはもうないような気分もて列車を降りる冬ざれの午後  木村陽子

スコップが畑の真中に立ったまま晦日は暮れるし牛蒡は抜けぬ  高原さやか

おとうとの部屋を通りて毛布干すハンターハンターのその後訊きつつ  篠野京

死に近き叔父は新年迎うるを最後の晴れと待ち望みたり  金原千栄子

書留は割高ですと窓口で三度言はれて三度うなづく  山縣みさを

***

敬称略。老いの歌と農の歌に惹かれる傾向があるようです。
「特集 歌集の作り方」も、とても興味深く読みました。

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール
HN:
おとも
性別:
女性
自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
ブログ内検索
最新コメント
[12/25 びょんすけ]
[09/11 ぴょんすけ]
[12/26 お湯]
[11/19 お湯]
[08/27 お湯]
*
Designed by Lynn
忍者ブログ [PR]