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川が好き。山も好き。
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阪神大震災から22年が過ぎました。それから、中越地震、東日本大震災、熊本地震、たくさんの地震がありました。東日本大震災を経験してからは、避難所の光景などをテレビで見る度に、あの日を思い出し胸が痛くなります。震災にまつわるドキュメンタリーもできるだけ見ています。

 酒井順子『地震と独身』は、とても印象に残る本でした。独身女性をテーマにしたエッセイに定評のある著者ですが、そんな著者が「ふと思ったこと」を、わたしも震災当初からずっと感じていました。震災関連の報道で取り上げられるのは、家族を亡くした悲しみ、家族との支えあい、家族の物語ばかりということです。子供や高齢者ではない世代の独身で被災した人について焦点があてられることはあまりありません。家族の絆を押し出した方が反響が良いのでしょうか。けれども、一人で震災の日々を生きるという事実は確かにあるのですから、見過ごされがちな独身者達の声に耳を傾けてくれたこの本を、ありがたく思いました。
 東京で過ごした独身で親や子のない著者自身、被災地に暮らして働いていた人、遠方からボランティアに来た人、被災地在住ではないもののもっと遠方へ移住した人、震災を機に結婚をした人、たくさんの独身達の震災に取材してあり、家族を優先した同僚の仕事が独身者に背負わされるなどメディアであまり語られることのない独身ならではのエピソードは興味深いものです。中でも、わたしが「そうそう!」とうなずいたのは、地震直後、既婚者はいち早く家族の元へ向かおうとするのに対し、独身者は帰宅を急がなかった、という部分です。実際に、わたしが職場で被災した時、こんな混乱した中を一人暮らしのアパートになんて怖くて帰りたくないと思っていたのに対し、既婚者の方が「ごめんね、先に帰るね」と謝って帰って行くのへ、意識のズレを感じたのでした。
 この本は2014年に出版されたものですが、2016年の文庫化にあたり書き下ろされた後書きとして、取材された方々のその後の様子などが知れたのもよかったです。当時に独身だからこそ震災を機に変わってゆく人生というものが思われます。
 
 わたしが震災を短歌に詠むときにも、意識して独身女性の視点を大事しています。自分が訴えたいというのもあるし、他の人があまり詠まれないことだとも思うので。歌に残してゆくということに、意味があると思いたいです。

 余震は今でも続いています。

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自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

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