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川が好き。山も好き。
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同僚の、わたしより八つぐらい年下の女の子が、趣味としてコピックで絵を描いている、と言うので、手持ちのコピックを何本か譲ることになった。コピックはマーカーにして一本400円程度と値も張るので「いいんですか!?」と同僚さんは恐縮していた。けれど、わたしはもう絵は描かないし、描くとしても彩色は透明水彩やアクリル絵の具にするだろう。コピックはわたしの画風にも合わないのだ。処分しようかと思っていたほどだったから、丁度よかった。必要としてくれる人の手に渡った方がいい。

 手持ちのコピックの中から30本ほど、あげてもよさそうな色を選びながら、件の同僚さんになつかしいものを感じた。男の人には興味がないから結婚はしたくない、自分の趣味のために生きたい、と敢えて一度も定職に就かず派遣を転々としている彼女。どこか、昔の自分を見ているようでもある(わたしは転々とはしなかったけれど)。今のわたしぐらいの年齢になった時に後悔しないといいけどな、なんて余計なお世話に過ぎないことを思ったりしつつ、彼女の話を聞く時は「趣味があるっていいね」「芸術的だね」「自分を持ってるんだね」なんて肯定したりする。
 これが昔のわたし相手なら「ちゃんと就職した方がいいよ、趣味は趣味でしかないよ」と言うだろう。でも、昔のわたしが母などにそう言われても、当時はいずれ絵を描かなくなるなんて思いもせず、聞く耳を持たなかったことまで思い出す。同僚さんにしても、今の自分の意思でそうしているのだから、定職にも異性にも目もくれず自分の意思で趣味に生きることによってきらきらしているのだから、それでいいのだと思う。若さというのは、きっとそういうものだ。

 自分のところに残しておきたい色を選んでいたら、茶系と緑系の色ばかり残った。残ったコピックで、木でも描くのか、わたしは。

  部屋うちの全てのものが過去形と思う真夜中色のパステル

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自己紹介:
短歌とか映画とかこけしとか。
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/¥2000)

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