川が好き。山も好き。
手のひらをゆるしてしまう手のひらを捧げてしまう獣のように
階段をゆっくり上がってゆく恋だ来週たぶん鎖骨にさわる
紐を引き蛍光灯を君が消す 蛍光灯が君越しに見ゆ
産み終えしのちのいもうとの饒舌なメール キラキラネーム名付けて
山吹のミツビシ鉛筆カバンから君は取り出し甥の名を聞く
帰り来るもののあることうれしかり君が借り行く藤沢周平
***
三首目の歌は、今月の百葉集に採っていただきました。百葉箱で吉川さんに「「蛍光灯」だけをクローズアップして歌っているが、恋の思いの溢れる一首」等々評もいただけてうれしいです。
九月号特別作品評で森さんに「包丁の音」のタイトル歌の評もいただきました。丁寧に読んでいただけてありがたいです。
階段をゆっくり上がってゆく恋だ来週たぶん鎖骨にさわる
紐を引き蛍光灯を君が消す 蛍光灯が君越しに見ゆ
産み終えしのちのいもうとの饒舌なメール キラキラネーム名付けて
山吹のミツビシ鉛筆カバンから君は取り出し甥の名を聞く
帰り来るもののあることうれしかり君が借り行く藤沢周平
***
三首目の歌は、今月の百葉集に採っていただきました。百葉箱で吉川さんに「「蛍光灯」だけをクローズアップして歌っているが、恋の思いの溢れる一首」等々評もいただけてうれしいです。
九月号特別作品評で森さんに「包丁の音」のタイトル歌の評もいただきました。丁寧に読んでいただけてありがたいです。
包丁の音
「また姉妹で温泉行こう!」婚約を伏せた賀状の添え書きなりき
十年を待たせて腹をくくりたるごとくいもうとは二十九で嫁す
いもうとに先を越された姉なるをネタの一つとして笑いたり
両親へ「子育て終了証」としてアルバム送りたるいもうとは
「おねーちゃんへ」御車代として熨斗に貼られていたり黄色の付箋
いつまでも帰る場所ではないような実家で作るナスの肉詰め
犬のために生きてるような友がいて未だ嫁がず十四歳上
寝そべったその身をひねり手術痕舐めているなり雨の雄犬
くちびるで舌で触れるということの、あなたの(わたしの)獣を怖る
あれはどこのじいさんと思えば父なりき畑で鍬を振るうすがたの
たぶん行くことはもうない父親の実家にあった鰹節削り
当たり前のように誰かがいることの未知まぶしくて大根を煮る
包丁の音であなたを待たせてた時間をわたし仕合わせと呼ぶね
独り居の友ことごとく犬猫と暮らしておれどわたしは飼わず
***
特別作品に掲載していただけた連作。三井さんの評によれば「家族との微妙な感情をあまり深刻にならず、さりげなく描いている」とのこと。
「また姉妹で温泉行こう!」婚約を伏せた賀状の添え書きなりき
十年を待たせて腹をくくりたるごとくいもうとは二十九で嫁す
いもうとに先を越された姉なるをネタの一つとして笑いたり
両親へ「子育て終了証」としてアルバム送りたるいもうとは
「おねーちゃんへ」御車代として熨斗に貼られていたり黄色の付箋
いつまでも帰る場所ではないような実家で作るナスの肉詰め
犬のために生きてるような友がいて未だ嫁がず十四歳上
寝そべったその身をひねり手術痕舐めているなり雨の雄犬
くちびるで舌で触れるということの、あなたの(わたしの)獣を怖る
あれはどこのじいさんと思えば父なりき畑で鍬を振るうすがたの
たぶん行くことはもうない父親の実家にあった鰹節削り
当たり前のように誰かがいることの未知まぶしくて大根を煮る
包丁の音であなたを待たせてた時間をわたし仕合わせと呼ぶね
独り居の友ことごとく犬猫と暮らしておれどわたしは飼わず
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特別作品に掲載していただけた連作。三井さんの評によれば「家族との微妙な感情をあまり深刻にならず、さりげなく描いている」とのこと。
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歌集『にず』(2020年/現代短歌社/本体¥2000)
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tomomita★sage.ocn.ne.jp
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