川が好き。山も好き。
また家が壊されている十五年わたしが通った道だ、一人で
余震なり臨時ニュースの声も灯も揺れ湯あがりの身は冷えてゆく
この部屋を出たいけれども ベランダの鉢に大葉の種を植えたり
「大安だー」と祖母はよろこぶ初めてのデイサービスに赴ける日を
牛乳を買いに自転車走らせるわたしの肩にてんとう虫は
***
今月号の「特集 マンガと短歌」にもエッセイと短歌を載せていただきました。漫画にまつわる、活字にはなってなかった短歌があり、過去作なので今さら月詠に出す感じでもなくて、でも思い入れのある一首だったので、こうした機会があってよかったです。皆さんのエッセイも愛にあふれて楽しく読みました。
選歌欄評で、川上さんにほうれい線の歌の評をいただきました。思いのほか寄り添って読んでいただきありがたいです。
余震なり臨時ニュースの声も灯も揺れ湯あがりの身は冷えてゆく
この部屋を出たいけれども ベランダの鉢に大葉の種を植えたり
「大安だー」と祖母はよろこぶ初めてのデイサービスに赴ける日を
牛乳を買いに自転車走らせるわたしの肩にてんとう虫は
***
今月号の「特集 マンガと短歌」にもエッセイと短歌を載せていただきました。漫画にまつわる、活字にはなってなかった短歌があり、過去作なので今さら月詠に出す感じでもなくて、でも思い入れのある一首だったので、こうした機会があってよかったです。皆さんのエッセイも愛にあふれて楽しく読みました。
選歌欄評で、川上さんにほうれい線の歌の評をいただきました。思いのほか寄り添って読んでいただきありがたいです。
地下鉄の窓に映れるわたくしのほうれい線よ三月四日
誰の手でもいいわけじゃない誰かの手を握りたいのは確かだけれど
ヘリコプターの音ひびきおり五年目の三月十一日仙台の朝
捜されている人がいて一人暮らしのわたしは一人部屋片付ける
五年目の三月十一日ゴミ出しを済ませひねもすテレビを見てた
異常無しと診断されるばかりなり震災より続く月経不順
忘れるという復興もありましょう わたしは忘れ生きてゆきます
***
江戸雪選歌欄評、わたしの担当は今月号までです。評を書くにあたり自分で決めていたことが二つありました。一つは「作中主体」「主体」という言葉を使わずに、「作者」と言い張ること。もう一つは、詠われていることは実景、実体験だと決め付けること。そんな感じで、評というより詠われている場面の感想のようなところもありましたが、それは「この場面の切り取り方、いいなあ」と思って選歌していたのでした。文法、修辞などはほんとうにわからないので、毎月いっぱいいっぱいでしたが、良い経験でした。半年間お読みいただきありがとうございました。
誰の手でもいいわけじゃない誰かの手を握りたいのは確かだけれど
ヘリコプターの音ひびきおり五年目の三月十一日仙台の朝
捜されている人がいて一人暮らしのわたしは一人部屋片付ける
五年目の三月十一日ゴミ出しを済ませひねもすテレビを見てた
異常無しと診断されるばかりなり震災より続く月経不順
忘れるという復興もありましょう わたしは忘れ生きてゆきます
***
江戸雪選歌欄評、わたしの担当は今月号までです。評を書くにあたり自分で決めていたことが二つありました。一つは「作中主体」「主体」という言葉を使わずに、「作者」と言い張ること。もう一つは、詠われていることは実景、実体験だと決め付けること。そんな感じで、評というより詠われている場面の感想のようなところもありましたが、それは「この場面の切り取り方、いいなあ」と思って選歌していたのでした。文法、修辞などはほんとうにわからないので、毎月いっぱいいっぱいでしたが、良い経験でした。半年間お読みいただきありがとうございました。
ふるさとを失くしたような寂しさだ本家の父ちゃん死んでしまった
ランニングシャツ着ていつも畑に居た本家の父ちゃん死んでしまった
一昨年の盆に本家の父ちゃんとゼリーを食べたのが最後なり
血縁はなくて本家の父ちゃんのお葬式には行かないままに
われの持つ一番高い洋服は喪服 社割で一八〇〇〇円
奥羽山脈越えた向こうの農村の葬列を思う雪の降る日に
笑い顔だけしか思い出せないやいつも笑っていた人だから
***
親戚でもなく単なる近所付き合いでもない本家とか分家とかいう繋がりは、わたし達の世代ではもうすっかり薄くなっています。本家の父ちゃん母ちゃんまでは行き来もありましたが、その50代の息子さんとなるとわたしはほとんど面識がありません。だからこそ、いつか消えてゆく言葉を、詠んで残しておきたく思うのでした。
ランニングシャツ着ていつも畑に居た本家の父ちゃん死んでしまった
一昨年の盆に本家の父ちゃんとゼリーを食べたのが最後なり
血縁はなくて本家の父ちゃんのお葬式には行かないままに
われの持つ一番高い洋服は喪服 社割で一八〇〇〇円
奥羽山脈越えた向こうの農村の葬列を思う雪の降る日に
笑い顔だけしか思い出せないやいつも笑っていた人だから
***
親戚でもなく単なる近所付き合いでもない本家とか分家とかいう繋がりは、わたし達の世代ではもうすっかり薄くなっています。本家の父ちゃん母ちゃんまでは行き来もありましたが、その50代の息子さんとなるとわたしはほとんど面識がありません。だからこそ、いつか消えてゆく言葉を、詠んで残しておきたく思うのでした。
カレンダー
プロフィール
HN:
おとも
性別:
女性
自己紹介:
歌集『にず』(2020年/現代短歌社/本体¥2000)
連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
連絡・問い合わせ:
tomomita★sage.ocn.ne.jp
(★を@に変えてお送りください)
ブログ内検索
カテゴリー
*